今日はルーナちゃんのお母さんが退院する日。
 ポチ達は、ルーナちゃんと一緒に香辛料屋さんに向かったよ。
 今日は、ポチとミッケちゃんとリルムちゃんで香辛料屋さんのお手伝い。
 香辛料屋さんのおっちゃんがルーナちゃんのお母さんの退院手続きをしてくるので、おっちゃんがいない間はポチ達がお店を切り盛りするんだよ。
 ルーナちゃんは、香辛料屋さんでお母さんを待つ事になったんだ。

「じゃあ、行ってくるぞ」
「「「いってらっしゃーい」」」

 病院に向かうおっちゃんを見送って、いよいよポチの出番だよ。
 商品の補充はミッケちゃんがおっちゃんに教わっていたし、お金の管理はリルムちゃんがやるんだって。

「よし、ルーナちゃんも準備万端だね」
「うん!」

 そして、今日はルーナちゃんも声掛けをするんだよ。
 ルーナちゃんは、ルーナちゃん用のエプロンと三角巾を着て準備万端。
 さあ、ポチとルーナちゃんで声掛けをするのだ。

「いらっしゃい! 今日もミックススパイスがお買い得だよ」
「いらっしゃーい!」

 ポチの声掛けを真似して、ルーナちゃんも一緒に声掛けをしているんだ。
 ちっちゃいルーナちゃんが声掛けをするから、周りの人からの注目度も一気にアップするよ。

「お、ポチちゃん。今日は小さいのも一緒か?」
「そうなの、ルーナちゃんっていうんだよ」

 早速冒険者のおっちゃんが声をかけてきたよ。
 すると、冒険者のおっちゃんはルーナちゃんの事をじろじろと見てきたんだ。

「おや? もしかして、この子は香辛料屋に勤めている店員の娘か?」
「おお、大正解! 今ね、香辛料屋さんのおっちゃんがルーナちゃんのお母さんを病院まで迎えに行っているんだ」
「そっかそっか。足を悪そうにしていたけど、無事に治療を受けられて退院できたんだな」
「そうなの! おかあさんたいいんするの!」

 冒険者のおっちゃんは、ルーナちゃんのお母さんの事を知っていたんだ。
 ルーナちゃんの頭を撫でながら、ルーナちゃんのお母さんの話をしていたよ。
 すると、他の冒険者もポチとルーナちゃんの周りに集まってきたんだよ。

「あのおっさん、いよいよルーナちゃんのお母さんを射止めにかかったか」
「ルーナちゃんのお母さんも、おっちゃんの事は悪く思っていないよね」

 そして女性の冒険者と買い物にきたおばちゃんとで、いつの間にか香辛料屋さんのおっちゃんとルーナちゃんのお母さんとの間の恋バナになったんだ。
 ポチは良くりっちゃんのお母さんと一緒にテレビでやっていた昼ドラを見ていたから、何となく分かるんだ。
 この前病院でおっちゃんとルーナちゃんのお母さんが楽しそうに話をしていたから、これはいけるんじゃないかってポチは思っているんだよ。
 ルーナちゃんは周りの人が言っていることは、何が何だかわからない様子だけどね。

「お、ご両人の到着だ」

 と、ここで商店街に買い物にきたおばちゃんが、街道に顔をむけている。
 街道では、ゆっくりと歩くルーナちゃんのお母さんと倒れないように寄り添う香辛料屋のおっちゃんの姿が。
 
「おかあさん!」

 お母さんの姿を見たルーナちゃんは、お母さんとおっちゃんの所に一目散に駆け出していったよ。
 そして、お母さんにぎゅーって抱きついていったんだ。

「おかあさん、おかえり!」
「ルーナ、ただいま」

 ルーナちゃんのお母さんも、ルーナちゃんをぎゅーっと抱きしめているよ。
 それにしても、香辛料屋さんのおっちゃんが持っている荷物がかなり多いような気がするな。

「おっちゃん、すごい荷物だね」
「暫くルーナちゃんとルーナちゃんのお母さんが、うちに住む事になったんだ。まだ暫くリハビリはかかるし、人の手があった方が良いだろうって事になったんだ」
「そうなんだ!」

 そっか、ルーナちゃんのお母さんはまだ歩くのが大変だからなあ。
 暫くは、誰かの手があった方が良いよね。
 そんな事を思っていたら、ポチと一緒にいたおばちゃん達がにやーって顔をしているの。
 そして同時に一言言ったんだ。
 
「「「ふーん」」」
「「うう……」」

 おっちゃんとルーナちゃんのお母さんは、おばちゃん達に一言言われると同時に顔が真っ赤になっちゃった。
 一方のルーナちゃんは、何が何だか分かっていないみたいだ。
 というか、ポチも良く分からなくなっちゃったよ。

「まあまあ、病人なんだしこの辺で」
「そうね、後でいくらでも聞く事ができるしね」
「ふふふ、これで商店街に行く理由が更に増えたわ」

 流石に冒険者のおっちゃんがおばさんに割って入ったけど、おばちゃん達のニヤニヤは止まらなかったよ。
 でも、無事にルーナちゃんのお母さんが退院できて良かった!
 おっと、ポチは声掛けをまだまだやるよ。

「いらっしゃい。お肉が美味しくなるスパイスは如何ですか!」
「いらっしゃーい!」

 ポチとルーナちゃんの声掛けを、荷物を置いてきてお店の中にやってきたルーナちゃんのお母さんもニコニコと見つめていたよ。
 ルーナちゃん、声掛けの素質ありそうだよ!