日付が変わる前にベッドに入ったが、お酒が中途半端に抜けて覚醒したのか、うまく眠ることができない。ベッドサイドの明かりをつけ、スマホを手に取りSNSアプリを開くが、並んだ文字を意味のある言葉として追う気にはなれず、早々と本を閉じる。
フローリングに敷かれたカーペットの上でくるみがすやすやと眠っている。店を出るときにはくるみは酔っ払って足もおぼつかず、「どうする?」と訊いても「どうする?」、「ホテルに泊まる?」と訊いても「泊まる?」といった具合で、いちいち私の真似をして、そしてまたふにゃふにゃと笑うだけだった。埒があかないと痺れを切らしたのはそりゃそうなんだけれど、だからって家に連れてくるなんてどうかしている。私の部屋に泊める義理なんてないのに。適当なホテルに押し込むか、道に放置しておけばよかった話だ。
するりとベッドを抜けて、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、一気に飲んだ。ふうっと息をつくと、寂寂とした部屋に、メッセージ受信を告げる通知音が響く。戻って枕元に転がっているスマホを手に取ると、液晶画面には樹の名前があった。なんとなく、読む気にはなれなかった。
もう一度ベッドに転がり、目を瞑る。眠気は一向に訪れる気配はない。こういうときは、良くも悪くも樹に原因がある。付き合い始めてから一年間、眠れない夜は何度かあった。これ以上ないと思えるほどの幸せな時間を過ごし、興奮で眠れない夜もあれば、くだらないことで喧嘩をして涙を流す夜や、樹が離れていく夢を見て飛び起きる夜もあった。夜中に彼の家に行ったこともある。そんなときは決まって、離れたりしないよ、ずっと一緒だよと樹は言い、大丈夫、大丈夫と私の頭を撫でてくれた。そうしてくれたら私は、それまでどんなにつらく心細い思いをしていたとしても、安心して眠ることができた。そうやって、いつも美しい朝を迎えられた。
いま樹がここにいて、私をきつく抱きしめてくれたらいいのに。
そんなことを期待しながら、私は睡魔に導かれるのをただひたすらに待ち続けた。
フローリングに敷かれたカーペットの上でくるみがすやすやと眠っている。店を出るときにはくるみは酔っ払って足もおぼつかず、「どうする?」と訊いても「どうする?」、「ホテルに泊まる?」と訊いても「泊まる?」といった具合で、いちいち私の真似をして、そしてまたふにゃふにゃと笑うだけだった。埒があかないと痺れを切らしたのはそりゃそうなんだけれど、だからって家に連れてくるなんてどうかしている。私の部屋に泊める義理なんてないのに。適当なホテルに押し込むか、道に放置しておけばよかった話だ。
するりとベッドを抜けて、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、一気に飲んだ。ふうっと息をつくと、寂寂とした部屋に、メッセージ受信を告げる通知音が響く。戻って枕元に転がっているスマホを手に取ると、液晶画面には樹の名前があった。なんとなく、読む気にはなれなかった。
もう一度ベッドに転がり、目を瞑る。眠気は一向に訪れる気配はない。こういうときは、良くも悪くも樹に原因がある。付き合い始めてから一年間、眠れない夜は何度かあった。これ以上ないと思えるほどの幸せな時間を過ごし、興奮で眠れない夜もあれば、くだらないことで喧嘩をして涙を流す夜や、樹が離れていく夢を見て飛び起きる夜もあった。夜中に彼の家に行ったこともある。そんなときは決まって、離れたりしないよ、ずっと一緒だよと樹は言い、大丈夫、大丈夫と私の頭を撫でてくれた。そうしてくれたら私は、それまでどんなにつらく心細い思いをしていたとしても、安心して眠ることができた。そうやって、いつも美しい朝を迎えられた。
いま樹がここにいて、私をきつく抱きしめてくれたらいいのに。
そんなことを期待しながら、私は睡魔に導かれるのをただひたすらに待ち続けた。



