唐揚げはあっという間に私たち3人で食べ終わり、お腹が満たされた。
 その瞬間、携帯にメールが一件届いた。

「おや、彼氏からかな?」
 ママが冗談を言う。

「そうなの?」
 時雨くんが反応する。私は首を横に振りながら画面を見ると、送信者は宮部くんでドキッとした。

「図星でしょ」
「……彼氏じゃないもん、幼馴染」
「別のところに行ったのにまた再会するなんて、運命の人じゃん」

 ……確かにそうかもしれない。
 住んでいる街は違うけれど、電車でお互いの住んでる場所からこの高校には行ける。
 本当に運命かもしれない。
 もう会えないと思ってた。特に別れの言葉も交わさずに。だって、急だったんだもん。好きだって言えないまま。

 そして……私が時雨くんという好きな人ができてから、宮部くんと再会するなんて思わなかった。

 メールは、ご飯を食べる前に送った唐揚げの写真への返事だった。
 宮部くんは時雨くんが料理を作ることを知っていて、一度写真を送ったら「毎晩送ってよ」って言われているから、唐揚げを送ったんだ。
『それ、明日の弁当に持ってきてよ』
 だって。

『ごめん、全部食べちゃった』
 って返信した。

「ほら、ニヤッとして。仲良いんだからー、青春ってやつね」
「だから違うってー」
「ムキになってるの可愛いんだから」
 ママは昔はこんなこと言わなかったなぁと思いながらも、私は席を立ち、食器を台所に運ぶ。

 時雨くんがシンクの前に立って、私が運ぶお皿を軽く濯いで、食洗機にうまく入れている。
 私にはなかなかできないなぁ。

「ねぇ藍里ちゃん、本当に彼氏じゃないよね?」
「だから時雨くんもまに受けないでよ」
「だよね。……よかった」

 えっ、よかったって?
 時雨くんはせっせと食洗機に入れていく。その後ろで、微妙な空気が流れる。
 ママはテレビを見始めて笑っている。ビールも3杯目に突入。
 なんだかもどかしい空気。

「あ、明日の弁当に唐揚げ入れるね」
「えっ、もう食べちゃったじゃん」
 時雨くんが笑いながら、冷蔵庫から取り出したのは唐揚げが漬け込まれている袋だった。

「まだ残しておいた」
「さっすがぁ」
「明日は金曜だからカレーかハヤシライス、どっちにしよう?」
「カレーがいいな」
「さくらさんはー?」
 ママがこっちを見ながら聞く。

「私はどっちでも〜」
 時雨くんと私は目が合った。

「じゃあカレーにしようか」
「そうだね、楽しみ」
 いつも通りの晩御飯の風景だったけれど……。