「うわぁ、藍里ちゃんのお弁当……やっぱり美味しそう!」
「毎日見てても飽きが来ないわー」

 高校に転校して半年。最初は友達ができるか不安だったけど、気づけば仲のいい子たちに囲まれている。

「お、今日は三色弁当か。鶏そぼろに卵にいんげん……あとグラタン?」

 そう言って覗き込んできたのは宮部くん。幼馴染だけど、中学は別だった。私が高校一年の時に転校してきたら、偶然同じ学校にいて、社交的な彼のおかげですぐクラスに馴染めた。

 彼の昼ご飯は焼きそばパンとメロンパン。他の子はお弁当だったり、学校の提携弁当だったり。私は家から持ってきた弁当を広げる。

 一段目は三色弁当、二段目にはグラタン、ウインナー入りの焼きそば、ミニトマト。
 手を合わせて「いただきます」と言い、まずは鶏そぼろから。

「朝から鶏そぼろ作るなんて無理よー。腕が疲れちゃう」
「分かる分かるー」

 アキが共感してるのを見て、みんな料理するんだなぁと思う。
 私は、ほとんどやったことがない。

「あ、このそぼろ、よく売ってる瓶入りのやつだよ。時短になるって」
「え、全部手作りかと思ってた!」
「焼きそばとか朝から作るのすごいし……」
「グラタンもレンチンのだよ。手を抜くところは抜かなきゃ、って言ってた」

 そう――「言ってた」。

 誰がって?

 このお弁当を作った人。
 うちの料理、洗濯、家事、全部を担ってる人。

 それは、私でも、ママでもない――。