花負う君にお弁当どうぞ

 陽に当たると金色に光る色素の薄い加原(かはら)くんの髪は、蛍光灯の下でも艶やかなミルクティー色に輝いていた。
 フルメイクした女子に負けない長さと量のまつげに縁取られた大きな瞳は緑がかり、お手本みたいに整った形の唇や眉毛と一緒に、卵形の輪郭へ行儀よくおさまっている。
 神様が気合い入れましたと言われたら、だよねー! って手をたたいちゃう。
 つまり、それくらい加原くんは顔がいい。

 多少眉をしかめてもなんの問題もない。不機嫌な表情さえも絵になるから。
 だけどその不機嫌の原因が私となれば話は別だ。
 すっと細められた瞳に私が映っていると思うと息が詰まってくる。

「そんなに食べ物の味を知ってほしいなら、菜絆(なずな)の味覚をくれよ」
「くれって……どういう」
「種を使えばできる。――なあ、覚悟はある?」

 花びらのゆれてこすれる音が、いつもより大きく聞こえる。
 太陽の光がなくても甘く誘惑するような匂いが強いのも、たぶん気のせいじゃない。
 きっと加原くんの意志を反映しているんだ。

 だって彼は花負い病という、背中に花が生える病気を患っているから。