夜、私はベッドの中で、RUINを開いてぼんやりとしていた。部屋の電気を消し、ベッド近くのランプがぼんやりと光を放つだけの暗い空間。ここが落ち着くし、誰かとRUINしているところを見られたくなかったから、家族におやすみを言ってからここに来た。
話すと言ったはいいものの、どこで、いつ、何を話すかは全然決まってない。それを決めておきたいけれど、今は夜。しかも相手は、あまり話したことがないクラスメイトの男子だ。どう連絡するべきか図りかねて、ベッドでゴロゴロしている。
『話をするって話だったけど、どこで話すの?』
そんなとき、涼風くんから連絡が来たのだ。私はとっかかりを作ってくれた涼風くんに感謝し、少し考えてからメッセージを作る。
『裏庭でいいんじゃない? 誰も来なさそうだし』
『確かに。あんまり人に見られたくもないな』
『じゃあ、決定だね』
涼風くんがふっと眉を下げている様子が目に浮かぶようで、ふふ、と私は思わず笑顔をこぼす。なぜだろう、今、すごく楽しい。秘密基地を建てているような、そんな感覚だからかもしれない。私の手は、自然と次のメッセージを作る。
『いつなら話せそう? どんな頻度で話すのがいいかな?』
そう聞いてから、あまりにもド直球に聞きすぎた、と反省した。
『夜見さんは、いつでも空いてるの?』
しばらく経って、逆質問の形で返事が来た。引かれているわけではなかったようで、ほっと胸をなでおろす。そして、私は文芸部のスケジュールを思い浮かべた。文芸部の部誌の発行は、大きな休みの後だ。だから、夏休み明けから始まる。
『夏休み明けからはちょっと活動が始まるけど……ウチはホワイトだから、基本的にいつでも空いてるよ。朝練とかもないし』
『夜、部活が終わった後の頃はどうなの?』
『塾がある火曜日と木曜日を除いたら、基本的に空いてるかな。塾がある日も、七時くらいに学校出れば問題ないよ』
そう送った後、なかなか返事が来なかった。既読はついているのに。
「……忙しいんだよね、きっと」
自分に言い聞かせるように独り言を呟いて、私はスマホの電源を落とした。誰も彼もすぐにメッセージを返せるわけじゃない。もしかしたらお母さんに呼ばれたのかもしれないし、寝落ちしちゃったのかもしれない。そもそも、こうして待っている私は、少し気持ち悪い部類に入るんじゃ?
そんなことをぼんやり考えていると、いつの間にか寝てしまっていたらしい。目を覚ますと、もう夜中だった。慌てて通知をチェックすると、二件だけ涼風くんから届いていた。
『じゃあ、できれば、僕が話したいと思った日に連絡させてもらう形にしたい』
『夜見さんには、迷惑をかけてしまうかもしれないけど』
簡潔なメッセージ。私はこんな時間に送っていいのか迷ったけれど、忘れないうちに返事をしておきたかったから、スタンプとメッセージを送ることにする。
『了解』
『私のことは気にしなくていいから。元々私の我儘だし。じゃあ、連絡待ってるね』
明日も学校だし、早く寝よう。私は携帯をスリープモードにすると、再び目を閉じた。
涼風くんから初めて連絡が来たのは、雲が多く、今にも雨が降り出しそうな、七月のはじめ。お昼休み、私たちが部室にいる時だった。中間テストも終わって、部活の大会が多く控えるこの時期は、みんな部活に心血を注ぐ。だから、涼風くんから連絡がきたとき、少し驚いた。練習もハードだし、すぐ帰りたいって思うのが普通だと思うのに。
『今日、部活終わった後、会える?』
それだけ、ストレスもたまりやすいのだろう。雲の多さに目をやり、私は天気予報のサイトを見て、この後の雨の状況をチェックする。降ったとしても夜遅くだから、裏庭で話をしていても雨に濡れる心配はなさそうだ。私は了承の返事を返しながら、隣で勉強していた天黎の肩をつついた。
「今日、誘われたから、部活の後に少し残るね。天黎、先帰ってていいよ」
「それ、どれくらいかかるかわかるの?」
計算の手を止めて顔を上げると、天黎はすぐに問い返してきた。私もすぐに首を振る。
「わからない。涼風くんが、どんなことを話したいのかもわからないし……」
「そう」
天黎はあまり納得できていないような雰囲気だが、口では納得しているような言葉を言っている。私は少し考えて、天黎の言葉の意図を察した。
「もしかして、待ってくれようとしてる?」
すると、天黎は少しばつが悪そうな顔をして、へらっと笑った。
「うん。灯鞠一人残して帰るの、結構心配でさ」
「……そっか」
私は嬉しくなって、ほっとして。天黎をぎゅうっと抱きしめた。天黎がぽすぽすと私の背中をたたく。
「灯鞠、私のことは気にしないで。好きでやってるだけだから。灯鞠はちゃんと涼風の話、聞いてきて」
「はぁい」
天黎はいつも一番に私のことを考えてくれる。そのことがすごく、幸せだし、うれしい。
話すと言ったはいいものの、どこで、いつ、何を話すかは全然決まってない。それを決めておきたいけれど、今は夜。しかも相手は、あまり話したことがないクラスメイトの男子だ。どう連絡するべきか図りかねて、ベッドでゴロゴロしている。
『話をするって話だったけど、どこで話すの?』
そんなとき、涼風くんから連絡が来たのだ。私はとっかかりを作ってくれた涼風くんに感謝し、少し考えてからメッセージを作る。
『裏庭でいいんじゃない? 誰も来なさそうだし』
『確かに。あんまり人に見られたくもないな』
『じゃあ、決定だね』
涼風くんがふっと眉を下げている様子が目に浮かぶようで、ふふ、と私は思わず笑顔をこぼす。なぜだろう、今、すごく楽しい。秘密基地を建てているような、そんな感覚だからかもしれない。私の手は、自然と次のメッセージを作る。
『いつなら話せそう? どんな頻度で話すのがいいかな?』
そう聞いてから、あまりにもド直球に聞きすぎた、と反省した。
『夜見さんは、いつでも空いてるの?』
しばらく経って、逆質問の形で返事が来た。引かれているわけではなかったようで、ほっと胸をなでおろす。そして、私は文芸部のスケジュールを思い浮かべた。文芸部の部誌の発行は、大きな休みの後だ。だから、夏休み明けから始まる。
『夏休み明けからはちょっと活動が始まるけど……ウチはホワイトだから、基本的にいつでも空いてるよ。朝練とかもないし』
『夜、部活が終わった後の頃はどうなの?』
『塾がある火曜日と木曜日を除いたら、基本的に空いてるかな。塾がある日も、七時くらいに学校出れば問題ないよ』
そう送った後、なかなか返事が来なかった。既読はついているのに。
「……忙しいんだよね、きっと」
自分に言い聞かせるように独り言を呟いて、私はスマホの電源を落とした。誰も彼もすぐにメッセージを返せるわけじゃない。もしかしたらお母さんに呼ばれたのかもしれないし、寝落ちしちゃったのかもしれない。そもそも、こうして待っている私は、少し気持ち悪い部類に入るんじゃ?
そんなことをぼんやり考えていると、いつの間にか寝てしまっていたらしい。目を覚ますと、もう夜中だった。慌てて通知をチェックすると、二件だけ涼風くんから届いていた。
『じゃあ、できれば、僕が話したいと思った日に連絡させてもらう形にしたい』
『夜見さんには、迷惑をかけてしまうかもしれないけど』
簡潔なメッセージ。私はこんな時間に送っていいのか迷ったけれど、忘れないうちに返事をしておきたかったから、スタンプとメッセージを送ることにする。
『了解』
『私のことは気にしなくていいから。元々私の我儘だし。じゃあ、連絡待ってるね』
明日も学校だし、早く寝よう。私は携帯をスリープモードにすると、再び目を閉じた。
涼風くんから初めて連絡が来たのは、雲が多く、今にも雨が降り出しそうな、七月のはじめ。お昼休み、私たちが部室にいる時だった。中間テストも終わって、部活の大会が多く控えるこの時期は、みんな部活に心血を注ぐ。だから、涼風くんから連絡がきたとき、少し驚いた。練習もハードだし、すぐ帰りたいって思うのが普通だと思うのに。
『今日、部活終わった後、会える?』
それだけ、ストレスもたまりやすいのだろう。雲の多さに目をやり、私は天気予報のサイトを見て、この後の雨の状況をチェックする。降ったとしても夜遅くだから、裏庭で話をしていても雨に濡れる心配はなさそうだ。私は了承の返事を返しながら、隣で勉強していた天黎の肩をつついた。
「今日、誘われたから、部活の後に少し残るね。天黎、先帰ってていいよ」
「それ、どれくらいかかるかわかるの?」
計算の手を止めて顔を上げると、天黎はすぐに問い返してきた。私もすぐに首を振る。
「わからない。涼風くんが、どんなことを話したいのかもわからないし……」
「そう」
天黎はあまり納得できていないような雰囲気だが、口では納得しているような言葉を言っている。私は少し考えて、天黎の言葉の意図を察した。
「もしかして、待ってくれようとしてる?」
すると、天黎は少しばつが悪そうな顔をして、へらっと笑った。
「うん。灯鞠一人残して帰るの、結構心配でさ」
「……そっか」
私は嬉しくなって、ほっとして。天黎をぎゅうっと抱きしめた。天黎がぽすぽすと私の背中をたたく。
「灯鞠、私のことは気にしないで。好きでやってるだけだから。灯鞠はちゃんと涼風の話、聞いてきて」
「はぁい」
天黎はいつも一番に私のことを考えてくれる。そのことがすごく、幸せだし、うれしい。



