帰り道。天黎に涼風くんと話した結果を聞かせた。あの後、涼風くんは詳しいことはRUINで話そうと言い、すぐに部活に戻ってしまった。きっと忙しいのだろうと思って見送って、私は部室に帰った。すると天黎が帰りの準備をしていて、
「帰ろ、灯鞠。用は終わったんでしょ?」
と言ったのだ。だからこうして日がまだ昇っている時間に、帰ってきたわけだけど。
「ふうん」
天黎が発した声は、それだけだった。興味がなさそうに、スマホを弄りながら彼女は歩く。私は彼女についていく。夕日が放つオレンジ色に、周りのブロック塀が染まる。二人分の足音が、静かな住宅街に響く。時折聞こえる、子供のはしゃぎ声と、車が走る音がやけに耳に残る。天黎が黙って歩くものだから、私はいたたまれない気持ちになってしまう。
「……怒ってる?」
私はおずおずと尋ねた。すると、天棃ははぁ、とため息をついて、立ち止まった。私も一歩後ろで立ち止まる。天黎がくるりと私のほうを向く。その顔に浮かんでいるのは、不思議な表情だった。憤っているようにも、悲しんでいるようにも、喜んでいるようにも見えるその表情から、天黎の正確な心情を読み取ることはできそうになかった。
「怒ってはないよ。ただ、ちょっとムカつくだけ」
「それって、怒ってるんじゃない」
「大丈夫、灯鞠を嫌いにはならないから」
肩をすくめて、天黎は論点をずらす。的確に自分の危惧していたことを言い当てられて、私はうぐっと言葉に詰まった。そんな私を見て、天黎はしてやったり、と言いたげな表情で笑った。それは、いつも通りの天棃の笑顔。
「だけど、私の相手をしてくれなくなったら許さないから」
「はいはい」
天黎と手を繋ぐ。天黎はそうして初めて、ほっとしたように笑う。ふと、どこかで見たような表情だ、と思う。その答えも、すぐに見つかって。
「迷子なのは、天黎もだね」
そうつぶやいた。天黎は聞き取れなかったのか、何を言っているのかわからなかったのか、眉をひそめた。
「なんの話?」
「私のイメージの話」
「なにそれ?」
「なんでもなーい」
天黎の追及をかわしながら、私は思う。私の中で涼風くんを放って置けない理由のうちの、一つが分かったかもしれない、と。
彼は天黎に、私の大切な人に似ているから。
「帰ろ、灯鞠。用は終わったんでしょ?」
と言ったのだ。だからこうして日がまだ昇っている時間に、帰ってきたわけだけど。
「ふうん」
天黎が発した声は、それだけだった。興味がなさそうに、スマホを弄りながら彼女は歩く。私は彼女についていく。夕日が放つオレンジ色に、周りのブロック塀が染まる。二人分の足音が、静かな住宅街に響く。時折聞こえる、子供のはしゃぎ声と、車が走る音がやけに耳に残る。天黎が黙って歩くものだから、私はいたたまれない気持ちになってしまう。
「……怒ってる?」
私はおずおずと尋ねた。すると、天棃ははぁ、とため息をついて、立ち止まった。私も一歩後ろで立ち止まる。天黎がくるりと私のほうを向く。その顔に浮かんでいるのは、不思議な表情だった。憤っているようにも、悲しんでいるようにも、喜んでいるようにも見えるその表情から、天黎の正確な心情を読み取ることはできそうになかった。
「怒ってはないよ。ただ、ちょっとムカつくだけ」
「それって、怒ってるんじゃない」
「大丈夫、灯鞠を嫌いにはならないから」
肩をすくめて、天黎は論点をずらす。的確に自分の危惧していたことを言い当てられて、私はうぐっと言葉に詰まった。そんな私を見て、天黎はしてやったり、と言いたげな表情で笑った。それは、いつも通りの天棃の笑顔。
「だけど、私の相手をしてくれなくなったら許さないから」
「はいはい」
天黎と手を繋ぐ。天黎はそうして初めて、ほっとしたように笑う。ふと、どこかで見たような表情だ、と思う。その答えも、すぐに見つかって。
「迷子なのは、天黎もだね」
そうつぶやいた。天黎は聞き取れなかったのか、何を言っているのかわからなかったのか、眉をひそめた。
「なんの話?」
「私のイメージの話」
「なにそれ?」
「なんでもなーい」
天黎の追及をかわしながら、私は思う。私の中で涼風くんを放って置けない理由のうちの、一つが分かったかもしれない、と。
彼は天黎に、私の大切な人に似ているから。



