「すごかったね!」
「花火と音楽、か……いいコラボだったね。音恋ちゃんに教えてあげようか?」
「いいね! きっと音恋ちゃん喜ぶよ~!」
ショーが終わり、余韻に浸りながら、私たちは観覧車に向かっていた。私と天黎が感想を言いあっている後ろで、涼風くんと一条くんは放心したようにぼーっとしながら歩いていた。天黎が最初にそれに気づき、「涼風? 光海?」と呼びかけた。
「ちょっと、何ぼーっとしてんの? 電柱にぶつかるよ」
「いや、ギャグじゃあるまいし」
天黎の冗談に即座に切り返した一条くんは、頭を掻きながら空を見上げた。
「その……あんなにきれいなものだと思わなくて。ショーって、子供だましみたいなもんだと思ってたから」
「遊園地だから、特別だったのかもね?」
私はそう呟いた。遊園地はワクワクを届けるところだ。だから、動画では感じ取れなかったワクワクを、ショーで見せてくれたのだろう。私は脳裏に舞台を思い描く。そこで踊っているキャストさん、マスコットキャラクター、パフォーマー……ああいうすごい人に、なりたかった。普通の高校生じゃなくて、もっと、輝けるような……
私が思わず考えを遠くのほうに飛ばしていると、
「僕も……すごかった。初めて見たよ、ああいうもの」
涼風くんがしんみりと、そう呟いた。その顔つきは穏やかで。天黎がふふっと小さく笑うと、涼風くんの顔を覗き込む。
「どう? 楽しめた?」
「うん、とっても。いい思い出だね」
涼風くんは、笑った。とっても自然な笑顔で。私たちもそれを見て、なんだかしんみりしてきてしまう。しばらくみんなでニコニコしながら歩いていると、
「そうだ!」
一条くんが声を上げて、私たちの前に来た。三人の注目を集めながら、にっ、といたずらっぽく笑う。
「なあ、四人で一機じゃなくて、二人で一機にしようぜ。そして、その組み合わせはぐっぱーで決める。どうだ?」
私がいまいち一条くんの言葉を咀嚼できずにいると、天黎が一条くんの手を掴んだ。おっ、と身を引く一条くんに対し、天黎はずいっと身を乗り出す。
「ちょっとまって。それってさ、男子と女子っていう組み合わせにもなる……ってこと?」
なぜだろう、また天黎に対して違和感を感じる。これは……なんだろう。私が気もそぞろになっているうちに、一条くんは天黎に頷きかけて、そっと手をほどいた。
「そうそう、そういうこと。最後までゲーム性持たせておいたほうが、楽しいだろ!」
一条くんはちらっと私と涼風くんを見て、再び天黎を見た。私は我に返る。
「良いんじゃない?」
一番最初に答えたのは、意外にも涼風くんだった。へえ、と一条くんがにやりと笑う。
「もしかして、俺とじゃなくて灯鞠ちゃんとか月守とかと乗りたかったりするのか?」
「積極的には思わないけど……ゲーム性があるのはいいんじゃないか?」
涼風くんは涼しい顔で一条くんの話を流すと、私と天黎を見た。
「二人は?」
私は別にどっちでもいいと思う。仲を深められるのはいいことだし、一条くんと涼風くんなら悪いことはしないはず。怖くもないし、ゲーム性があるのは私もいいと思う。私は天黎とアイコンタクトを取った。天黎はそこまで強く反対したいとは思っていなかったっぽい。こくりと頷きあう。
「賛成」
「私も」
短い返事で答えると、一条くんがちょっと道路の端に寄って止まり、手を出した。私たちも同じようにして止まって、手を出す。
「グッとっパーで分かれましょ!」
出された手は……
私が、パー。天黎が、グー。涼風くんが、パー。一条くんが、チョキだった。
「ぐあーっ! ミスった!」
頭を抱える一条くんの手に、三人の少し冷たい視線が集まった。
「光海? チョキはグーでもパーでもないけど」
涼風くんがそうつっこんだ。私は記憶をたどる。
「確か……チョキは、グーの子供だ、とか言ってたっけ」
すると天黎がえっ、と声を上げた。
「じゃあ、私と光海、灯鞠と涼風ってこと?」
一条くんは間違えてチョキを出したことに呻いていたが、やがてゆっくりと頷く。
「まあ、そういうことだろうな」
少しの間、沈黙が流れて……天黎が肩を落とすと、私に向かってグーを出してきた。私もグーを出し、無言でじゃんけんを交わす。結果、私が勝ったので、天黎が一条くんを引っ張って私たちの後ろに並んだ。
「じゃあ、灯鞠、先ね」
「うん」
私は返事をして、涼風くんを見上げた。涼風くんは困ったように立ち竦んでいる。
「行こう」
私はそっと涼風くんの背を押した。涼風くんは我に返って、歩き始める。私は涼風くんを見上げた。
「私とは、いやだった?」
一番の懸念点を口にした。すると、涼風くんはすぐに首を振った。
「いや、大丈夫だよ。ゲーム性があっていいねって言ったのは、僕のほうだから」
否定してくれたことにほっとして、私は胸をなでおろした。そんな私の様子を見ながら、ねえ、と涼風くんは話しかけてくる。ん? と私が彼を見上げると、どこか気まずそうに視線をそらしながら、
「こんなところでも悪いんだけど……観覧車の中で、少しだけ、話したい」
ああ、と私は納得した。涼風くんと裏庭で話すようになってから、二か月くらい経っただろうか。夏休みに入ってからあまり話せなかったから、結構ストレスがたまっていたのかもしれない。遊園地に遊びに来ることが気晴らしになればいいと思っていたけれど、やっぱりそれだけじゃ厳しいのかもしれない。私は出来る限りの優しい笑顔を浮かべて、
「もちろんだよ。じゃあ、後でまたお話聞かせて」
と笑った。涼風くんはこちらもほっとしたような表情で、
「よろしくね」
と言った。一条くんと天黎は私たちが会話している間、黙って私たちを見ていた。私は、それに気づかなかったけれど。
観覧車の列に着くと、かなり並んでいた。何分待ち、と書かれた看板には、十五分、と書かれていた。
「十五分かー。どこかに抜けようにも抜けれない時間だね」
天黎がぼやいた。私も同意する。三十分待ちとかなら交代で並んで周りをぶらぶらしたりできるけど、十五分なら少しそこに行っている間にかなり進んでしまったりしそうだ。大きい観覧車を見上げて、ほう、とため息をついていると、一条くんがクシャっと髪をかき混ぜた。
「俺、待つの苦手だな……そうだ透海、マッチ棒しようぜ」
一条くんが両手で一を出すと、涼風くんもすぐに応じて両手を出した。楽しそうだな、と思ってそちらを見ていると、なぜか手をもじもじとさせている天黎が目に入った。そこで、気づく。もしかして、天黎は……
「ねえねえ、一条くんと涼風くんが良ければ、なんだけど。私たちも混ぜてくれない? ごちゃごちゃしてたほうが間違いやすくて楽しいんだよ」
始める前だったので、私はそう切り込んだ。一条くんと涼風くんは顔を見合わせた後に、頷いた。涼風くんが、天黎に向けて微笑む。
「もし月守さんもよいのなら、いいよ」
「俺も。みんなでやったほうが楽しいもんな」
一条くんもニッと笑った。みんなの視線が天黎に向かう。天黎はすぐにいつも通りの笑顔を浮かべて、
「やる!」
と言った。そこからみんなでマッチ棒をしていたら、あっという間に観覧車の順番が回ってきた。
「花火と音楽、か……いいコラボだったね。音恋ちゃんに教えてあげようか?」
「いいね! きっと音恋ちゃん喜ぶよ~!」
ショーが終わり、余韻に浸りながら、私たちは観覧車に向かっていた。私と天黎が感想を言いあっている後ろで、涼風くんと一条くんは放心したようにぼーっとしながら歩いていた。天黎が最初にそれに気づき、「涼風? 光海?」と呼びかけた。
「ちょっと、何ぼーっとしてんの? 電柱にぶつかるよ」
「いや、ギャグじゃあるまいし」
天黎の冗談に即座に切り返した一条くんは、頭を掻きながら空を見上げた。
「その……あんなにきれいなものだと思わなくて。ショーって、子供だましみたいなもんだと思ってたから」
「遊園地だから、特別だったのかもね?」
私はそう呟いた。遊園地はワクワクを届けるところだ。だから、動画では感じ取れなかったワクワクを、ショーで見せてくれたのだろう。私は脳裏に舞台を思い描く。そこで踊っているキャストさん、マスコットキャラクター、パフォーマー……ああいうすごい人に、なりたかった。普通の高校生じゃなくて、もっと、輝けるような……
私が思わず考えを遠くのほうに飛ばしていると、
「僕も……すごかった。初めて見たよ、ああいうもの」
涼風くんがしんみりと、そう呟いた。その顔つきは穏やかで。天黎がふふっと小さく笑うと、涼風くんの顔を覗き込む。
「どう? 楽しめた?」
「うん、とっても。いい思い出だね」
涼風くんは、笑った。とっても自然な笑顔で。私たちもそれを見て、なんだかしんみりしてきてしまう。しばらくみんなでニコニコしながら歩いていると、
「そうだ!」
一条くんが声を上げて、私たちの前に来た。三人の注目を集めながら、にっ、といたずらっぽく笑う。
「なあ、四人で一機じゃなくて、二人で一機にしようぜ。そして、その組み合わせはぐっぱーで決める。どうだ?」
私がいまいち一条くんの言葉を咀嚼できずにいると、天黎が一条くんの手を掴んだ。おっ、と身を引く一条くんに対し、天黎はずいっと身を乗り出す。
「ちょっとまって。それってさ、男子と女子っていう組み合わせにもなる……ってこと?」
なぜだろう、また天黎に対して違和感を感じる。これは……なんだろう。私が気もそぞろになっているうちに、一条くんは天黎に頷きかけて、そっと手をほどいた。
「そうそう、そういうこと。最後までゲーム性持たせておいたほうが、楽しいだろ!」
一条くんはちらっと私と涼風くんを見て、再び天黎を見た。私は我に返る。
「良いんじゃない?」
一番最初に答えたのは、意外にも涼風くんだった。へえ、と一条くんがにやりと笑う。
「もしかして、俺とじゃなくて灯鞠ちゃんとか月守とかと乗りたかったりするのか?」
「積極的には思わないけど……ゲーム性があるのはいいんじゃないか?」
涼風くんは涼しい顔で一条くんの話を流すと、私と天黎を見た。
「二人は?」
私は別にどっちでもいいと思う。仲を深められるのはいいことだし、一条くんと涼風くんなら悪いことはしないはず。怖くもないし、ゲーム性があるのは私もいいと思う。私は天黎とアイコンタクトを取った。天黎はそこまで強く反対したいとは思っていなかったっぽい。こくりと頷きあう。
「賛成」
「私も」
短い返事で答えると、一条くんがちょっと道路の端に寄って止まり、手を出した。私たちも同じようにして止まって、手を出す。
「グッとっパーで分かれましょ!」
出された手は……
私が、パー。天黎が、グー。涼風くんが、パー。一条くんが、チョキだった。
「ぐあーっ! ミスった!」
頭を抱える一条くんの手に、三人の少し冷たい視線が集まった。
「光海? チョキはグーでもパーでもないけど」
涼風くんがそうつっこんだ。私は記憶をたどる。
「確か……チョキは、グーの子供だ、とか言ってたっけ」
すると天黎がえっ、と声を上げた。
「じゃあ、私と光海、灯鞠と涼風ってこと?」
一条くんは間違えてチョキを出したことに呻いていたが、やがてゆっくりと頷く。
「まあ、そういうことだろうな」
少しの間、沈黙が流れて……天黎が肩を落とすと、私に向かってグーを出してきた。私もグーを出し、無言でじゃんけんを交わす。結果、私が勝ったので、天黎が一条くんを引っ張って私たちの後ろに並んだ。
「じゃあ、灯鞠、先ね」
「うん」
私は返事をして、涼風くんを見上げた。涼風くんは困ったように立ち竦んでいる。
「行こう」
私はそっと涼風くんの背を押した。涼風くんは我に返って、歩き始める。私は涼風くんを見上げた。
「私とは、いやだった?」
一番の懸念点を口にした。すると、涼風くんはすぐに首を振った。
「いや、大丈夫だよ。ゲーム性があっていいねって言ったのは、僕のほうだから」
否定してくれたことにほっとして、私は胸をなでおろした。そんな私の様子を見ながら、ねえ、と涼風くんは話しかけてくる。ん? と私が彼を見上げると、どこか気まずそうに視線をそらしながら、
「こんなところでも悪いんだけど……観覧車の中で、少しだけ、話したい」
ああ、と私は納得した。涼風くんと裏庭で話すようになってから、二か月くらい経っただろうか。夏休みに入ってからあまり話せなかったから、結構ストレスがたまっていたのかもしれない。遊園地に遊びに来ることが気晴らしになればいいと思っていたけれど、やっぱりそれだけじゃ厳しいのかもしれない。私は出来る限りの優しい笑顔を浮かべて、
「もちろんだよ。じゃあ、後でまたお話聞かせて」
と笑った。涼風くんはこちらもほっとしたような表情で、
「よろしくね」
と言った。一条くんと天黎は私たちが会話している間、黙って私たちを見ていた。私は、それに気づかなかったけれど。
観覧車の列に着くと、かなり並んでいた。何分待ち、と書かれた看板には、十五分、と書かれていた。
「十五分かー。どこかに抜けようにも抜けれない時間だね」
天黎がぼやいた。私も同意する。三十分待ちとかなら交代で並んで周りをぶらぶらしたりできるけど、十五分なら少しそこに行っている間にかなり進んでしまったりしそうだ。大きい観覧車を見上げて、ほう、とため息をついていると、一条くんがクシャっと髪をかき混ぜた。
「俺、待つの苦手だな……そうだ透海、マッチ棒しようぜ」
一条くんが両手で一を出すと、涼風くんもすぐに応じて両手を出した。楽しそうだな、と思ってそちらを見ていると、なぜか手をもじもじとさせている天黎が目に入った。そこで、気づく。もしかして、天黎は……
「ねえねえ、一条くんと涼風くんが良ければ、なんだけど。私たちも混ぜてくれない? ごちゃごちゃしてたほうが間違いやすくて楽しいんだよ」
始める前だったので、私はそう切り込んだ。一条くんと涼風くんは顔を見合わせた後に、頷いた。涼風くんが、天黎に向けて微笑む。
「もし月守さんもよいのなら、いいよ」
「俺も。みんなでやったほうが楽しいもんな」
一条くんもニッと笑った。みんなの視線が天黎に向かう。天黎はすぐにいつも通りの笑顔を浮かべて、
「やる!」
と言った。そこからみんなでマッチ棒をしていたら、あっという間に観覧車の順番が回ってきた。



