夜風の中で、君に伝えたいこと。

「さて、と……うわあ、意外と時間経ってたな」
 脱出ゲームを終えた私たちは、いったん休憩しようということになって、近くに設置されていた自販機で飲み物を買い、ベンチに腰かけていた。一条くんは空と時計を交互に見ながらそう呟いた。
「お昼食べた後も結構遊んでたもんね」
 脱出ゲームに入ったのは、確か四時過ぎくらいだった。そして脱出ゲームで一時間くらい時間を使ったから、もう五時は回っている。私はカルピスを飲んで、ふー、と息を吐いた。はしゃいで、頭を使ったから、体が重い。結構、疲れている。運動不足の文芸部員には少しハードなスケジュールだったかもしれない。
「もう、観覧車行って、お土産買って帰っちゃう?」
 わたしよりはまだ元気そうな天黎が、ぷしゅっとレモネードのふたを開けながらそう提案した。私は、それでもアリだと思う。今から観覧車に乗って、お土産を買うと……六時半くらいにここを出ることになる。疲れた体には、それがいいかもしれない。私が頷いていると、
「……ちょっと、行きたいところがあるんだけど」
 涼風くんがいきなり、そう呟いた。彼はココアを片手に、マップとにらめっこをしていた。私と一条くんは視線を交わしあって、頷いた。涼風くんが行きたいと初めて言い出したのだ。それをかなえてあげたい。
「どこに行きたいの?」
 私が涼風くんの近くに行ってマップを覗き込むと、涼風くんは一点を指した。そこに描かれている文字は、
「『ナイトショー』?」
 ナイトショーは、六時半開場、七時開演の、三十分ほどのショーだ。もう薄暗い時間帯だから、花火と音楽のコラボパフォーマンス、噴水やキャラクターとキャストのダンス、ライトアップなど様々な催しがある。
「これ見てからだと、かなり帰るのが遅くなりそうなんだけど……みんなは大丈夫?」
 涼風くんが申し訳なさそうに尋ねた。天黎も一条くんも私も、少し考えこんだ。七時半くらいに終わって、そのあと観覧車に乗って……大体、ここを出るのが八時か八時半くらい。家に帰るのは、九時くらいになりそうだ。
「それくらいなら、大丈夫かな?」
 私は考えながら、そう呟いた。天黎と一条くんも大丈夫だ、と頷く。すると、涼風くんはほっとしたような表情で笑ってくれる。私はスマホでナイトショーのことを調べてみて、皆に見せた。

 子供も楽しめるし、大人も楽しめる。座って見ることができるから、疲れていても大丈夫。整理券を先に受け取っておけば、席は確保できる。

「じゃあ、整理券を先に受け取って……そのあと、お土産買っておく?」
 天黎がそう提案した。一条くんがそれに頷いて、
「お土産を買った後に、夕飯も済ませておいたほうがよさそうだな」
 付け加えて、どうだ? と私と涼風くんに尋ねた。私たちは顔を見合わせて、頷いた。
「よし、じゃあ、まずは整理券、取りに行くか!」
 一条くんの掛け声に、私たちはおー! と返事をした。涼風くんの顔には、自然な笑みが浮かんでいた。


 その後、私たちは無事に四人横並びの席の整理券をもらって、お土産屋さんでたくさんのお土産を買った。お菓子やぬいぐるみなどなど。それで、お昼とは別の食事処でハンバーグなどがっつりしたものを食べて、今、開演を待ちながら、席に座っている。並び順は左から、天黎、私、涼風くん、一条くん。一条くんと天黎を横並びにするとケンカしそうだから、という理由でこの並びに落ち着いたのだ。
「楽しみだなぁ」
 涼風くんがそう漏らした。多分それは、本心からこぼれた言葉なのだろう。
「楽しみだね」
 私もそう呟いた。涼風くんが驚いたようにこちらを見てから、仕方がなさそうに笑う。
「聞かれてた?」
「口に出てたよ」
 そう答えて、くすっと笑ってしまったら、涼風くんもくっ、と笑ってくれた。そして、二人ともなく、前のほうを……舞台のほうを見る。

 音楽が流れだし、それに合わせるように、花火が上がる。ショーが開演した。
花火パフォーマンスは、音楽とともに披露された。J-popやクラシックなどの音楽に合わせて、花火が上がる。色とりどりの花火が夜空を彩り、音楽の節々にどーん、とインパクトのあるリズムを加える。
 五曲分くらい披露された後では、遊園地のマスコットキャラクターが出てきて、キャストさんと一緒にダンスを披露した。小さい子が踊れるようなダンスでは、皆座りながら一緒に踊る。キャストさんの中には歌を歌いながらダンスをする人もいた。
 そのあと、少しだけ演技も交えたストーリー性のあるショーが行われた。LEDライトで作られたライトアップ装置が、ショーに華やかさを付け加える。
 さいごには、噴水のパフォーマンスが行われた。吹き上がる水がライトアップされることで、今まで見たことのない光景を作り出す。そして、最後の最後には、高く高く噴水が吹きあがるとともに、夜空に今までのより一番大きな花火が打ち上げられ、噴水の水がはじけると同時に、花火も弾けた。