それから、私たちは順調に謎をクリアしていった。私と天黎の発想力で何かを考えだし、一条くんと涼風くんがそこから考えを広げる、という方法でやっていたら、以外とすいすいと謎を解くことができたのだ。それに、それぞれの謎は四択で答えが用意されていて、ヒントも多かった。
一問目。なぜ召使いはいないのか。答えは、みんな殺されてしまった。
二問目。だれに、なぜ殺されたのか。答えは、公爵閣下に、公爵閣下の陰謀のせい。
「なんか、だいぶ残酷な設定だね……」
「だな。てか、簡単に人殺してるけど、子供が入ってきたらやばくねえか?」
「見てなかった? 一応、対象年齢は十五歳以上ってなってたけど」
「マジか」
この二問で、私たちはこの世界がダークファンタジーの世界だと理解した。そして、これを考えた運営に対して、少し引いた。
三問目。陰謀とはどのようなものか。答えは、人の命を奪うことによる実験。
四問目。実験はどのようなものか。答えは、人口生命体の開発。
「ちょっとこれ……ファンタジーの世界じゃなかったの? SF混ぜるなんて、先輩方が見たらかなり怒りそう……」
「柚月先輩とかね。あの人、割とそういうとこ気にするし」
「文芸部でもジャンルの混合はご法度?」
「うーん……先輩たちが嫌ってるだけかな? 結構普通に混ぜてる小説多いし。でもこれは……」
「うん。中世ヨーロッパ風のファンタジー世界観なのに、SFが来るのは違和感あるよね」
「へぇ……まあ、確かに?」
「光海……あんた、全然わかってないでしょ」
「あ、ばれた?」
この二問で、そこにSFの要素が混じっていることもわかった。そのせいだろうか……五問目が、かなり難しかった。
五問目。人口生命体とはどのようなものか。
ホムンクルスというものや、遺伝子操作をした人、ロボットでもいいし、選択肢にもどれもあり得そうなものが多かった。
「ファンタジーっていうのに縛られると、どれかわからないな……」
「涼風が無理なら私もわかんない。どういう思考してんの、この運営は」
「まあまあ。とりあえず、ヒント探してみよう」
憤慨する天黎をなだめて、私たちはヒントを探し集め、何とか遺伝子操作をした人、という結論にたどり着く。
「この脱出ゲームマジできついな。選択肢が微妙に近いし」
「そうだね。これを考えた人、すごいと思う」
「え、灯鞠はそっち派? 私は否定派」
「うーん、私もジャンルの混合はあまり好きじゃないけど……でもアイデア自体はすごいでしょ」
正解のファンファーレをBGMに、私たちは文句を言いあいながら、ルートに従って歩く。今は涼風くんを先頭に、私と天黎が横並び、後ろに一条くん、という隊列で歩いていた。
「もうすぐ終わるかな?」
天黎をなだめるのも疲れたし、こういう重ためのテーマを扱うところは結構苦手だ。期待を込めてそう呟くと、後ろの一条くんが頭を掻いた。
「公爵閣下が消えた理由がまだ明らかになってないからな。もう少し頑張ろうぜ」
「……確かにそうだね」
私は一条くんの励ましに微妙な反応を返してしまう。自分で脱出ゲームはどうかと提案したのに、もう帰りたいと思ってしまっている。そういう自分勝手なところいやだ、とこんなところでも自己嫌悪に陥っていると、
「っていうか、こんなにダークな世界観でいいの? 遊園地って、もっと明るいとこでしょ」
天黎が不機嫌そうに指摘した。たしかに、基本的に楽しいアトラクションが多い遊園地にこういうものがあるのは不思議だ。お化け屋敷はそういうものって決まっているからいいけれど、遊園地の脱出ゲームと聞けば、もっと楽しそうなものをイメージする人も多いのではないだろうか。そういうことを考えていたら、自然と自己嫌悪は消えていた。私たちがうーん、と考えていると、
「そういうギャップもあって、高評価を呼んでいるみたいだよ」
涼風くんが教えてくれた。
「ほんと、詳しいね」
「一回調べたからね」
何回か聞いたような会話を涼風くんと天黎がしているうちに、六問目にたどり着いた。
なぜ公爵閣下は人口生命体を開発したのか。
「難しいね」
「ふつうはわからないでしょ」
涼風くんがうなり、天黎がお手上げ、というように肩をすくめた。私は選択肢を見る。
1 戦争に使うため。
2 自分で愛でるため。
3 家族の代わりにするため。
4 自分の身代わりにするため。
どれもありそうな展開だ。お貴族様なら戦争にかかわることもあるだろうし、愛人を欲しがることもあるだろう。家族を失うのもファンタジー世界ではあり得るし、身代わりだって必要だ。私は当たりをライトで照らしていく。すると、壁にかかっている絵画に気が付いた。
「……女の子」
ふと思った。なぜ、公爵閣下は消えたのか。召使いを殺してまでして、作りたかったのか。戦争? それなら、すでにいる兵士を鍛えるほうがコスト的にも労力的にもマシだ。愛人? それなら、もっと美しい貴族の女性はたくさんいるだろう。となると、答えは家族の代わりか身代わりかのどちらか。そして、ここにかかっている女の子の絵画……
召使いを殺して、自分も消えて、その先にあるのは何だろう。ただの絶望だ。
もう少しあたりを照らしてみると、もう一枚、絵画を見つけた。女の子を膝に乗せた女性と、後ろに立つ男性。女の子はさっきの絵画の子にそっくりだ。
「きれいだね……」
いつの間にか涼風くんが隣に来ていた。私はうなずいて、じっとその絵画を見ていた。この絵画がヒントとしておかれているのは明白。ならば、答えも一つだろう。
「3番にしてみよう」
「……わかった」
私の呟きに涼風くんが頷いて、天黎に合図をした。三番を入力すると、正解のファンファーレが鳴り響く。天黎も一条くんも、私たちが立っている絵画の前に来た。
「これがヒントか……」
一条くんがつぶやく。私はその呟きを聞きながらも、なぜか焦りと苦しさを感じていた。早く知りたい。この謎の結末を。早く知って……助けてあげなきゃ……
「次に行こう」
私はみんなをせかして、次に行く。なんで急いでいるのか。そんなことを聞く人は、誰もいなかった。助けてあげなきゃ。なぜそう思ったのか、私にはわからない。でも、なぜか無性にそう思うのだ。
次の謎解きブースに着いて、天黎が慣れた手つきで端末を操作する。その間に、私はブースがあるスペースを観察した。行き止まりのようだった。そして、設置されている端末の奥に、一つのドアがあった。
天黎が操作し終えて、私たちの端末に謎が映し出されて———皆、目を見開いた。
一問目。なぜ召使いはいないのか。答えは、みんな殺されてしまった。
二問目。だれに、なぜ殺されたのか。答えは、公爵閣下に、公爵閣下の陰謀のせい。
「なんか、だいぶ残酷な設定だね……」
「だな。てか、簡単に人殺してるけど、子供が入ってきたらやばくねえか?」
「見てなかった? 一応、対象年齢は十五歳以上ってなってたけど」
「マジか」
この二問で、私たちはこの世界がダークファンタジーの世界だと理解した。そして、これを考えた運営に対して、少し引いた。
三問目。陰謀とはどのようなものか。答えは、人の命を奪うことによる実験。
四問目。実験はどのようなものか。答えは、人口生命体の開発。
「ちょっとこれ……ファンタジーの世界じゃなかったの? SF混ぜるなんて、先輩方が見たらかなり怒りそう……」
「柚月先輩とかね。あの人、割とそういうとこ気にするし」
「文芸部でもジャンルの混合はご法度?」
「うーん……先輩たちが嫌ってるだけかな? 結構普通に混ぜてる小説多いし。でもこれは……」
「うん。中世ヨーロッパ風のファンタジー世界観なのに、SFが来るのは違和感あるよね」
「へぇ……まあ、確かに?」
「光海……あんた、全然わかってないでしょ」
「あ、ばれた?」
この二問で、そこにSFの要素が混じっていることもわかった。そのせいだろうか……五問目が、かなり難しかった。
五問目。人口生命体とはどのようなものか。
ホムンクルスというものや、遺伝子操作をした人、ロボットでもいいし、選択肢にもどれもあり得そうなものが多かった。
「ファンタジーっていうのに縛られると、どれかわからないな……」
「涼風が無理なら私もわかんない。どういう思考してんの、この運営は」
「まあまあ。とりあえず、ヒント探してみよう」
憤慨する天黎をなだめて、私たちはヒントを探し集め、何とか遺伝子操作をした人、という結論にたどり着く。
「この脱出ゲームマジできついな。選択肢が微妙に近いし」
「そうだね。これを考えた人、すごいと思う」
「え、灯鞠はそっち派? 私は否定派」
「うーん、私もジャンルの混合はあまり好きじゃないけど……でもアイデア自体はすごいでしょ」
正解のファンファーレをBGMに、私たちは文句を言いあいながら、ルートに従って歩く。今は涼風くんを先頭に、私と天黎が横並び、後ろに一条くん、という隊列で歩いていた。
「もうすぐ終わるかな?」
天黎をなだめるのも疲れたし、こういう重ためのテーマを扱うところは結構苦手だ。期待を込めてそう呟くと、後ろの一条くんが頭を掻いた。
「公爵閣下が消えた理由がまだ明らかになってないからな。もう少し頑張ろうぜ」
「……確かにそうだね」
私は一条くんの励ましに微妙な反応を返してしまう。自分で脱出ゲームはどうかと提案したのに、もう帰りたいと思ってしまっている。そういう自分勝手なところいやだ、とこんなところでも自己嫌悪に陥っていると、
「っていうか、こんなにダークな世界観でいいの? 遊園地って、もっと明るいとこでしょ」
天黎が不機嫌そうに指摘した。たしかに、基本的に楽しいアトラクションが多い遊園地にこういうものがあるのは不思議だ。お化け屋敷はそういうものって決まっているからいいけれど、遊園地の脱出ゲームと聞けば、もっと楽しそうなものをイメージする人も多いのではないだろうか。そういうことを考えていたら、自然と自己嫌悪は消えていた。私たちがうーん、と考えていると、
「そういうギャップもあって、高評価を呼んでいるみたいだよ」
涼風くんが教えてくれた。
「ほんと、詳しいね」
「一回調べたからね」
何回か聞いたような会話を涼風くんと天黎がしているうちに、六問目にたどり着いた。
なぜ公爵閣下は人口生命体を開発したのか。
「難しいね」
「ふつうはわからないでしょ」
涼風くんがうなり、天黎がお手上げ、というように肩をすくめた。私は選択肢を見る。
1 戦争に使うため。
2 自分で愛でるため。
3 家族の代わりにするため。
4 自分の身代わりにするため。
どれもありそうな展開だ。お貴族様なら戦争にかかわることもあるだろうし、愛人を欲しがることもあるだろう。家族を失うのもファンタジー世界ではあり得るし、身代わりだって必要だ。私は当たりをライトで照らしていく。すると、壁にかかっている絵画に気が付いた。
「……女の子」
ふと思った。なぜ、公爵閣下は消えたのか。召使いを殺してまでして、作りたかったのか。戦争? それなら、すでにいる兵士を鍛えるほうがコスト的にも労力的にもマシだ。愛人? それなら、もっと美しい貴族の女性はたくさんいるだろう。となると、答えは家族の代わりか身代わりかのどちらか。そして、ここにかかっている女の子の絵画……
召使いを殺して、自分も消えて、その先にあるのは何だろう。ただの絶望だ。
もう少しあたりを照らしてみると、もう一枚、絵画を見つけた。女の子を膝に乗せた女性と、後ろに立つ男性。女の子はさっきの絵画の子にそっくりだ。
「きれいだね……」
いつの間にか涼風くんが隣に来ていた。私はうなずいて、じっとその絵画を見ていた。この絵画がヒントとしておかれているのは明白。ならば、答えも一つだろう。
「3番にしてみよう」
「……わかった」
私の呟きに涼風くんが頷いて、天黎に合図をした。三番を入力すると、正解のファンファーレが鳴り響く。天黎も一条くんも、私たちが立っている絵画の前に来た。
「これがヒントか……」
一条くんがつぶやく。私はその呟きを聞きながらも、なぜか焦りと苦しさを感じていた。早く知りたい。この謎の結末を。早く知って……助けてあげなきゃ……
「次に行こう」
私はみんなをせかして、次に行く。なんで急いでいるのか。そんなことを聞く人は、誰もいなかった。助けてあげなきゃ。なぜそう思ったのか、私にはわからない。でも、なぜか無性にそう思うのだ。
次の謎解きブースに着いて、天黎が慣れた手つきで端末を操作する。その間に、私はブースがあるスペースを観察した。行き止まりのようだった。そして、設置されている端末の奥に、一つのドアがあった。
天黎が操作し終えて、私たちの端末に謎が映し出されて———皆、目を見開いた。



