「その村から出てきた人がいるんですか? だから、そんな噂が立ったんですよね?」
「いんやぁ、違う」
男性が左右に首を振ると、汗が飛び散った。

「でもじゃあ、その噂は誰が流し始めたんですか?」
「山の川から手足が流れてきたんじゃ。それが手紙を握りしめとった」
「手紙……?」
雄一が振り向く。

達也が小刻みに震えてカメラがブレた。
これ以上は話を聞きたくないと小さな声で言うが、雄一には聞こえてなかった。

「そうじゃ。ある日山から誰かの手足が流れてきた。その手が握りしめた手紙にいまよい村におったことが書かれとったんじゃ。村には自殺志願者が集まって、幸せな暮らしをしとる。じゃけぇど、半年に1度いまよい村の神様にイケニエを捧げんといけんらしい。その儀式に自分が選ばれたと書いとったんじゃ」

「イケニエ……今回発見された手足も、もしかして?」
「あぁ。そうじゃろうな。その儀式があってイケニエが川から流れて来たんじゃろうなぁ」

「で、でもそれならいつくもの手足が流れてきていないといけませんよね? 今話に聞いた1回と、ニュースになった1回だけだとしたら、いまよい村ができたのは1年前ってことになりますよね?」

震えていた達也が疑問を感じて質問した。
その声は終始震えている。