途端に人好きのする笑顔を浮かべて、ふたりの前に水を出してくれた。
達也はカウンターにカメラを置くと、すぐに冷やし中華を注文した。
雄一も同じものだ。

「こんなところまで来て観光なんてしなくても、もっと他に遊ぶところがあるだろぉ」
カウンターの奥で冷やし中華を準備しながら男性が聞いてくる。
「はい。でもこういう田舎で遊んだことってあまりないので、新鮮ですよ」

雄一が笑顔で返答する。
「ははっ。そういやユーチューブでも田舎で遊ぶとか、田舎暮らしとか沢山あるもんなぁ。若いのに物好きが多いなぁ」

「滝とか古墳とか。やっぱりすごいなって思います。あと、大きな鳥居も見に行きました」
「鳥居? 神社にも行ったのかぁ?」

男性がふたり分の冷やし中華をカウンターから差し出してくる。
ふたりはそれを受け取ってすぐに箸をつけた。
「いえ、神社はありませんでした。奥は山になってたよな?」

雄一が達也に視線を向けると、達也はむせそうになりながら「あぁ、そうだったな」と、相槌を打った。
その瞬間男性の眉間にシワが寄った。