☆☆☆
「なんだよラーメン屋しかないのか」
カメラは町の駅周辺を映し出した。
小さな無人駅の周りにあるのは虫の飛び交っている公衆トイレと自販機、それに閉店した飲食店が数件だけだった。
その中で赤い暖簾を出しているのはラーメン屋一軒だけだった。
「嫌なら朝の商店に行くか?」
前を歩く雄一がカメラに視線を向けて訊ねる。
「いや、ラーメンにするよ。本当は冷たいものが食べたかったんだけどな」
達也がカメラを自分の頭上へと向けた。
太陽が照りつけて雲ひとつない青空が映る。
「皆さん今日の気温は40度を超えるようです。そんな中、俺たちはよくわからない町をさまよい歩いて、挙句の果てにラーメンを食べようとしています」
「おい達也、いいかげんにしろよ? 夏美がいなくなってるんだぞ!」
振り向いた雄一がずんずんと近づいてくる。
その目は釣り上がり、本気で怒っているのがわかった。
「冗談だって、悪かったよ。熱くてさ、ちょっと気分が落ち込んでたから盛り上げようと思ったんだ」
言い訳をしながらラーメン屋へ向かうと、引き戸に【冷やし中華あります】という張り紙を見つけて達也が「さっすが!」と、声を上げた。
引き戸を開けて中に入ると、カウンターが5席あるだけの狭い店内が映し出された。
中から50代後半くらいの男性が出てくると、カメラを見てけげんそうな顔つきになった。
「なんだあんたら、テレビの人かぁ?」
少し訛りのある言葉で話しかけられて雄一が前に出た。
「違います。俺たちただの学生で、今日は観光に来たんです。カメラはユーチューブ撮影で回してるんですけど、店内映っても大丈夫ですか?」
「あぁ、ユーチューブかぁ。それから俺もよく見る。他のラーメン屋がどんな風に営業してんのか、勉強になるからなぁ」
「なんだよラーメン屋しかないのか」
カメラは町の駅周辺を映し出した。
小さな無人駅の周りにあるのは虫の飛び交っている公衆トイレと自販機、それに閉店した飲食店が数件だけだった。
その中で赤い暖簾を出しているのはラーメン屋一軒だけだった。
「嫌なら朝の商店に行くか?」
前を歩く雄一がカメラに視線を向けて訊ねる。
「いや、ラーメンにするよ。本当は冷たいものが食べたかったんだけどな」
達也がカメラを自分の頭上へと向けた。
太陽が照りつけて雲ひとつない青空が映る。
「皆さん今日の気温は40度を超えるようです。そんな中、俺たちはよくわからない町をさまよい歩いて、挙句の果てにラーメンを食べようとしています」
「おい達也、いいかげんにしろよ? 夏美がいなくなってるんだぞ!」
振り向いた雄一がずんずんと近づいてくる。
その目は釣り上がり、本気で怒っているのがわかった。
「冗談だって、悪かったよ。熱くてさ、ちょっと気分が落ち込んでたから盛り上げようと思ったんだ」
言い訳をしながらラーメン屋へ向かうと、引き戸に【冷やし中華あります】という張り紙を見つけて達也が「さっすが!」と、声を上げた。
引き戸を開けて中に入ると、カウンターが5席あるだけの狭い店内が映し出された。
中から50代後半くらいの男性が出てくると、カメラを見てけげんそうな顔つきになった。
「なんだあんたら、テレビの人かぁ?」
少し訛りのある言葉で話しかけられて雄一が前に出た。
「違います。俺たちただの学生で、今日は観光に来たんです。カメラはユーチューブ撮影で回してるんですけど、店内映っても大丈夫ですか?」
「あぁ、ユーチューブかぁ。それから俺もよく見る。他のラーメン屋がどんな風に営業してんのか、勉強になるからなぁ」



