雄一の叫び声が山の中に吸い込まれて消えていく。
ついさっきまで隣にいた夏美が今はどこにもいない。
その異様な出来事にふたりの鼓動が早くなる。

「嘘だ。こんなのありえない。だって、鳥居をくぐっただけだぞ?」

達也がそっと鳥居に手を触れる。
石でできたそれは冷たいのかと思ったが、予想外に熱を持っていた。
昼間の太陽光を溜め込んでいるのかもしれない。
「夏美、どこに行ったんだ!?」

雄一が鳥居をくぐって奥へと向かう。
しかしそこにあるのは木々ばかりで人の気配すらなかった。
「もしかして森の中に入っていったとか?」

達也が森をズームするが、その奥は真っ暗でなにも見えない。
「嘘だろ、ついさっきまで近くにいたのに、そんなにすぐに移動できるわけない」

それに、夏美が森の中へ入っていくような物音だってしなかった。
夏美はカメラの前で本当にこつ然と消えてしまったのだ。