これがその鳥居なのかもしれない。
車の広間の中で停車した。
「すごい雰囲気だな」

車から下りて付近を撮影すると、空気がスーッと冷えていくのを感じる。
まるで来てはいけない場所に来てしまったような感じだ。
ヘッドライトが消えた周辺は月明かりだけになり、薄ぼんやりとしている。

時折風が吹いてきて木々がざわめき、何者の侵入も拒んでいるように思えた。
「大きな鳥居。だけど奥には社殿もなんにもないから、きっとここで合ってる」
夏美がひとりで鳥居へと近づいていくので、雄一が慌ててそれを追いかけた。

「夏美、あまりひとりで奥に行かない方がいい。野生動物がでるかもしれない」
そう言われて夏美は立ち止まり、鳥居を見上げた。

「立派な鳥居だな。どうして他の物は取り壊されて、鳥居だけ残ってるんだろうな」
カメラが鳥居を下からなめあげる。