「地図にもいまよい村なんてなかったし、行方不明者たちはどこに行ってしまったの?」
顔を上げた夏美が質問してくるが、達也は答えられなかった。
「なぁ、明日からバイトを休むから、村を探しに行ってみないか?」

雄一が夏美にそう提案した。
夏美は驚いたように目を丸くして、そのまま固まってしまう。
「おいおい雄一、なに無茶なこと言ってんだよ。夏美ちゃんは……引きこもりだぞ」

最後だけ達也の声が小さくなる。
「わかってる。だけどこの前は少しだけひとりで外に出ることができたよな。今夏美が一番興味を持ってるいまよい村に関することだったら、勇気を出して外へ出ることができるかもしれない。俺も、たぶん達也も一緒だろうし、なによりここじゃない、○○県に行くんだ。誰も夏美のことを知らない土地だ」

一気に言って雄一が夏美へ視線を向けた。
夏美は考え込んでしまって顔をあげない。

「……すごく行ってみたい。だけどすぐに返事はできないかも」
「もちろん。しっかり考えてみてくれ」