「このドキュメンタリーを製作するに当たって、夏美ちゃんとは一週間前に1度お会いしました。そのときにお互いに下の名前で呼んでいいということになっています」

達也の説明に夏美がうんうんと小刻みにうなづく。
「それで、夏美ちゃんは引きこもりって聞いたんだけど、それは本当?」
「はい、本当です」
夏美が頼りない様子でコクンとうなずく。

その瞳はカメラ外にいる雄一を何度も確認した。
「それはいつから?」
「17歳の頃からです」

「というと、高校2年生?」
「はい」
「夏美ちゃんは俺達と同じ20歳だよね? 3年間引きこもってるってことで、合ってる?」

頷く夏美が雄一の手を強く握りしめた。
「よし、じゃあ最近の話を聞かせてくれる? 家の中にいて、なにをして時間を潰すの?」
「部屋にいるときはネットで買い物をしたり、動画を見たりしてます」

「へぇ、どんな買い物をするの?」
「音楽が好きだから、気になる曲をダウンロードしたり、たまにCDも買います」
夏美の顔に笑みが浮かんで来る。