その瞬間カメラ画面がグニャリと揺れた。
だけど達也はそれに気が付かず、しばらく無言の時間が過ぎていった。
風が吹いて木々を揺らしたとき、異変に気がついた。

カメラの奥に小道が見えているのだ。
今までなかった村へと続く小道がある。

構えたカメラを今入ってきた鳥居へと向けると、その向こうに乗ってきたはずの車も田畑もなく、同じような山の木々が続いているだけだ。

「入れた……?」
達也の呆然とした声が聞こえてくる。
どれだけ願っても入れないと思っていた異空間へと侵入に成功したのだ。

途端に全身に鳥肌がたった。
恐怖と困惑と、少しの喜びで体が空中に浮いているような奇妙な感覚になる。

「今……山の中に入ることができました。ここは、普通の人が入ることできない、特別な村へと続いています」

達也はカメラに自分の顔を撮して言った。
顔面は真っ青で、今にも倒れてしまいそうだけれど、しっかりと地面を踏みしめて小道へと向かう。

「雄一はここから村へと向かったみたいです。俺も……行きます」
ゴクリと唾を飲む音。