「トミー、さっきからずっと森の中を歩いてるの。どこにもたどり着かないし、本人も迷子になったって言ってるし、もしかしたら本当に迷子なのかも」
画面の中からは男の息遣いだけが聞こえてくる。
「迷子って、こいつバカ?」

「達也よりはマシだろ」
「なんだと雄一!」
「ふたりとも落ち着いて。トミーはこの森に入り込む前に古い鳥居をくぐってたの。だけどその後迷子になっちゃったんだって」
「鳥居があったなら、その奥には寺とか神社があるはずじゃないのか?」

雄一の質問に夏美が頷いた。
「普通はそうだよね。だけど建物はなくて、山の奥に続いてたんだって」
「神社とか寺がないってことは、その鳥居だけ取り壊されずに放置されてたってことじゃないか?」

達也が推測を述べる。
「そうなのかも。よくわからないけど」
夏美がそう言ったとき、動画配信中の画面が突如消えて暗転した。

「あれ、トミーどうしちゃったんだろう」
「そういう演出じゃなくて?」
「今までそういう演出は一度もなかったよ。ちゃんと、動画の最後を締めくくってたもん」