「どうしよう。俺になにができる? どうすればいい?」
鳥居の前で達也がグルグルと歩きまわって自問自答を繰り返している。
だけど答えは出ず、その場にしゃがみこんで「チクショー!」と叫ぶ。

やり場のない焦燥感と怒りと不安と恐怖がないまぜになって体が動けなくなってしまいそうだった。
雄一との通話が途切れてからもう数時間が経過していた。
時刻は昼になりそうだ。

「頼むよ。俺もいまよい村に入らせてくれ」
言いながら何度も何度も鳥居をくぐる。

けれどその体が忽然と消えることはなかった。
「俺はどうすりゃいいんだよ。ここで雄一と夏美を待ってればいいのか? ひとりで!?」
鳥居へ向けてさけんだ時、畑仕事をしていたあの年配の男性がカメラ内に映り込んできた。

「なんだぁ。まぁだここにいたのか? 相変わらずカメラまで回して、いつまでここにおる気ならぁ?」
「じぃさん……なぁじぃさんはいまよい村に詳しかったよな?」
達也がおじいさんの体にすがりつく。
おじいさんはクワを地面に突き立てて、それを支えにして立っていた。