思った以上にひどい現実にメマイがしてきた。
到底常識が追いついていかない世界だ。
それでも村の紹介はまだ続いた。

『こっちにはもっとすごい建物があるんだ』
雄一が建物の裏手に回って木々に身を隠すようにして移動を始めた。
ここから先は見つかったら危険なのかも知れない。

「気をつけてくれよ雄一。村の連中に捕まったら殺されるかもしれねぇんだからさぁ」
だけど雄一からの返事はなかった。

隠れながらの移動に集中しているみたいだ。
そうしてたどり着いたのは最も大きな建物の裏手だった。

『ここには窓がないんだ』
ようやく雄一の声が聞こえてきた。
雄一は建物に近づくと細いドアの前に立った。

『ここは裏口で、子供から聞いた話によれば大人の男女なら誰でも入ることができるらしい』
ドアを開ける時に大きくキシム音が聞こえてきて達也がヒヤリとする。