『見えるか? この小屋の中には大音量で音楽が流れてるんだ。今まで聞いたことのない音楽で、なんとなく不快な気分になる』

「あぁ、聞こえてきてるよ。不協和音だな」
小屋の中では数人の男女が床に座り、耳を押さえてうずくまっている。

「その人達はなにをしてるんだ?」
『なにもしてない。ただ小屋の中でこの音楽を聞かされてるだけだ。おそらくだけど、この人たちはまだ村に順応してないんだと思う。だからこうして音楽を聞かせて村に馴染むように洗脳してるんじゃないかと思うんだ』

「洗脳!?」
『そうだ。この部屋に二度と入れられたくないなら言う通りにしろ、とか、そういうやつを前にテレビで見たことがある』

「それじゃ、お前もそこに入ったのか!?」
『いや、入ってない。さっきも言ったけど俺が出会ったのは子供だったんだ。話はしたけれど、危害は加えられなかった』

その言葉に達也が安堵のため息を吐き出した。
「心臓に悪いな。頼むから村の中で隠れててくれよ」
『まだ見せたいものがあるんだ』