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「今、また鳥居まで戻ってきました」
カメラが達也の声と、目の前の鳥居を捉える。
色々なことを知った今ではその存在が別物のようにさえ感じられた。

「この先に夏美がいる。絶対に、連れ戻す」
雄一が呪文のように口の中で呟いて鳥居をくぐる。
けれどその姿が消えることはなかった。

「くそっ! なんで俺はダメなんだよ! こんなに悩んでるだろ!?」
山の木々へ向けて叫ぶと驚いた鳥たちが一斉に飛び立っていった。

「俺も村に入れてくれ! 真司くん!」
雄一の声は木々の中に吸い込まれて消えていく。
その声はきっといまよい村までは届いていないのだろう。

無情にも薄暗い闇が続いているだけで、誰かがいる気配すら感じられない。
カメラはずっとそんな雄一の姿を捉えていた。