その矢先の行方不明事件とあって、用務員さんはかなり驚いたという。
「いなくなる前日だけ急に明るくなったんですか?」
質問したのは裕香だった。

話を聞いている内に興味が湧いてきたのだろう。
さっきから用務員さんの説明をとても真剣な表情で聞いている。
「僕にはそう見えたけどねぇ。クラス内での様子は見たことがないから、わからないけど」

「他にはなにか知っていることがないですか? その、真司くんのことならなんでもかまいません」
会話を終わらせないように雄一が食い下がる。
「そうだなぁ。印象的だったのはあの子はいつも創作ノートを持ち歩いてたことかな」

「創作ノート?」
雄一が聞き返す。

「あぁ。小説家とか漫画家になりたいのかと思ってたんだけど、そういうノートじゃないと聞いたことがあるよ。なんでも自分だけの理想の世界が書かれているんだとか」
「理想の世界? それってどういうものですか?」