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「うわぁ、懐かしい」
カメラは中学校のだだっ広いグラウンドを映し出している。
カメラの前を歩いているのは雄一と、さっきの女性だ。

名前を裕香さんと言うらしい。
「母校訪問とかしないんですか?」
「私は勉強もできなかったし問題児だったから、そういうのはあまりしないかなぁ」

裕香さんがおどけた調子で言って肩をすくめている。
「でも、学校に帰ると先生たちも喜ぶじゃないですか?」
「普通の生徒ならね? 先生だって人間だもの、問題児が戻ってきたからって急にいい思い出になんかならないわよ」

それから裕香さんを先頭にして職員用玄関に入る。
先に連絡を入れておいたため、すぐに用務員の男性がでてきてくれた。
小学校で話した事務の先生とは違い、こちらは骨と皮が歩いているような感じだ。

年齢は40歳前半だと裕香さんから聞いていたけれど、その体つきのせいでもっと年上に見える。
「やぁ、久しぶりだね」
用務員さんは事前に裕香さんのことを思い出していたのか、懐かしそうに頬を緩めた。