「もしかしてこれのこと?」
そう言って女性が形のいい爪先で記事を指差す。
10年前の夏頃、15歳の少年が行方不明になったという記事だった。
「山に入った目撃証言があるが、探してもみつからなかった。か……」

記事の内容を抜粋して雄一が読み上げる。
大雑把にいえばそういう内容のようだ。

「本当にこんなことがあったのね。たぶんその時には耳に入ってたはずだけど、私ったら忘れちゃってる」
女性が顔をしかめて左右に首をふる。

「この事件についてもっとよく知りたいんですけど、詳し人とかご存知ないですか?」
「そうねぇ……。この中学校の用務員さんだったら長く務めているからなにか知っていることもあるかもしれないわ。私の母校だから、連絡を取ってあげようか?」

その言葉に雄一と達也は顔を見合わせた。
「お願いします!」
そしてふたり同時に言ったのだった。