「わかります。卒業式って泣けますよね。それじゃ逆に悪かったことはなにかないですか?」
ここからが本題だ。
雄一が微かに居住まいを正した。

「悪かったこともそりゃあ一杯あるよ。子供はなにをするかわからないからね。目を話したすきに遊具から落ちて怪我をしたりとか、友達同士で喧嘩して血がでたりとかねぇ」

「そういうのは大変そうですね。子供は急にどこかに行っちゃたりもしますよね」
「そうだね。学校の中にいても迷子になっちゃう子もいたよ」
今度は思い出し笑いをしている。

本当に子供が好きみたいだ。
「他にはなにかないですか? 例えば、どこかへ行ったまま帰ってこなかった子とか、いませんか?」

しびれを切らしたのか雄一が際どい質問をする。
しかしそれには事務員の男性は左右に首を振った。

「幸いなことにそういうことは起こってないよ。この13年間は怪我する子供は沢山いても全員無事にここを卒業してるよ」
ニッコリ微笑む事務員さんをみて雄一が達也へ視線を向けた。

「実は町の人から聞いた話があるんです。10年前、子供がいなくなったって」
「10年前?」
事務員さんが首をかしげる。
「さぁ? そんなことがあったかなぁ? この学校でそんなことがあれば覚えているはずだから、別の学校のことじゃないかい?」