グレーのポロシャツに黒のサスペンダー付きのズボンという姿で、お腹が前に突き出している。
綺麗な白髪は丁寧に撫でつけられていて、年齢は50代後半くらいに見える。
「やぁ。はじめまして」

人の良さそうな笑顔で右手を差し出されて雄一は反射的に握手をした。
「そっちのカメラの人もはじめまして」

「あ、どうも。俺はこいつの友達で、同じ大学の田村っていいます。あの、撮影しても大丈夫ですか?」
「いいけど、校内の撮影はやめてくれるかい?」

そう言われて達也はすぐにカメラをおろした。
3人で外へ向かい、グラウンドのベンチに腰をおろした。
「それで、大学でなにを調べているんだい?」

「自由研究みたいなものです。ちょうどこの町の観光パンフレットが大学に置いてあったので、それで来てみたんです」
雄一がポケットに入れておいた町の地図を取り出して見せた。

「なるほど。この町に興味を持ってくれてうれしいよ。もう観光名所には行ったのかい?」