それから3人共畑のへりに座り込んだ映像に切り替わった。
「いまよい村っていうのは、どのくらい昔にできたんですか?」
「詳しくは知らんが、噂が立ち始めたんは10年くらい前のことじゃったなぁ。その時に一番最初のイケニエの手足が川から流れてきたんじゃ」

「昨日教えてくれた話ですね。手には、手紙が握られていたとか」
「そうじゃ。それがきっかけでワシらは山の中にいまよい村ができたっちゅーて知ったわけじゃな」
おじぃさんが何度も頷く。

「10年前に、この町でなにかが起こったりしてませんか? 異変とか、災害とか、なんでもいいです」
「そうじゃなぁ……10年前言うたら、子供が1人おらんよぉなったって騒ぎになった年じゃったかなぁ」

「子供が? その子は誰ですか? いまよい村に誘い込まれた子ですか?」
雄一が身を乗り出して質問するが、おじいさんは眉間にシワを寄せて左右に首を振った。

「いんやぁ。あの子供がおらんよぉなったんは、手足が流れてくるより前のことじゃった。じゃから、そのときにいまよい村が存在しとったんかどうかワシらにはわからん。それに子供の名前も覚えとらんのぉ。なにせ、その子供が失踪した後に手足が見つかる事件があったんじゃから、あっという間に忘れ去られてしもぉたわ」