爪が両腕に食い込んで皮膚が真っ赤に染まって行った。
『だけど違うの。どうにか逃げ出したから触られるだけで済んだの』
それを聞いて内心ホッとしてしまった自分を殴り殺してやりたい。

どこが大丈夫で、どこに安心できる要素があったものか。
『あいつら人間じゃねぇな』

怒りで声が震えた。
男子生徒はそれがバレるのが怖くて自主退学したのだろう。
だけどそれに関わったふたりは今でも当然のように学校に来ている。

その話を聞いた翌日、俺はふたりのうちのひとりを校舎裏へ呼び出した。
夏美が告白されたあの忌まわしい場所だ。
『雄一くん、なにか用事?』

男なら誰でもいいんだろうか。
こんな場所に呼び出されてなにか勘違いしているようだ。
俺は無言で女子生徒を押し倒して馬乗りになると、そのスカートのポケットからスマホを奪い取った。