すると3度目のコールで夏美が出た。
達也が慌ててカメラを構えた。
「頼む雄一、カメラ電話に切り替えてくれ」

「わかってる」
スマホ画面の左上に雄一の顔が写り、そしてすぐに夏美の顔が大写しになった。
「夏美!」

『雄一、電話くれてありがとう』
そう言う夏美の声が明るくて、家にいたときよりも元気に聞こえてくる。

「夏美大丈夫か? なにもされてないか?」
『私は大丈夫だよ。今村の外れて電話してるの。見て、これがいまよい村だよ』

カメラが村の様子を捉えた。
木製の家と大きな体育館のような場所がいくつも建ち並んでいる。

山の頂上付近なのか、電灯がなくても月明かりでその風景を確認することができた。
『コンクリート作りの建物はね、青山村があったときに作られたものなんだって。あ、青山村っていうのはね』
「知ってる。いまよい村の前にあったんだろ?」
雄一の返答に夏美は驚いた様子で目を丸くした。

『さすが雄一だね。ちゃんと調べたんだ?』
「もちろんだ。夏美を助け出したいと思ってる」