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飯島涼子の家から退去したふたりは空き地に止めた車に戻ってきていた。
運転席で雄一が深くため息を吐き出す。
「これで飯島涼子も自殺志願者だってわかったな」

達也の言葉に雄一は呻くようにに頷いた。
「みんないまよい村に入っていって出られなくなったに違いない。その中で半年に一度イケニエを出し続けてるんだ。下手をすれば半年後、夏美がイケニエにされるかもしれない」

「夏美ちゃんを外に出す方法は?」
「飯島涼子の母親が言ってたよな。生きる希望があれば戻ってくるかも知れないって。それっていまよい村から脱出するための手段にならないかな」

「どうだろうな。夏美ちゃんはもう3年間も引きこもりなんだろ? そう簡単に希望が持てるかどうかもわからないんじゃないか?」
「でも、どうにかしなきゃ」

雄一はそう言うとスマホを取り出した。
「夏美に電話する」
「電話? 通じるのか?」

「わからないけど、鳥居をくぐってすぐには通じたんだ。それにトミーだって配信を続けてた」
早口で説明して夏美の電話にかける。