その説明に雄一と達也は目を見交わせた。
引きこもりという単語に雄一が敏感に反応している。
「大学でなにがあったんですか?」

「おそらく、友達と仲違いしてしまったみたいなの。大学ともなると、異性関係でモメることもあるし、そういうことなんだと思う」
母親の声が小刻みに震える。

必死で涙をこらえているようだ。
「あの子、自分が勉強したかったこともできないような精神状態になって、すごく苦しんでたの。そんなときの失踪だから、自分からいなくなったんだと思ってるんだけど……」

そこで言葉を切って白いハンカチで口元を覆った。
嗚咽が漏れて聞こえてくる。
「どうすれば涼子さんが戻ってくると思いますか?」

その問いかけに女性は「あの子にもう一度生きる希望を与えれば戻ってくるかもしれない」と、答えたのだった。