NPC(ノンプレイヤーキャラクター)


 5月の連休が明ける頃には、何となく教室内は落ち着いていた。AとKの勢力が拮抗し、絶妙なバランスによって平穏がもたらされていたからだ。

 僕はというと、当然のように勢力争いどころか、両グループのイベントにも不参加を決め込んでいる。おかげ様で、すでに当初の目標通りオブジェとしての地位を確立済みだ。

 だけど、どちらのグループに対しても平等に関心がないからこそ、完全な傍観者として現状を客観的に把握している。それは、SNSの両ルームに在籍していることも大きい。お互いのグループが何を考え、どう行動しているのかが手に取るように分かるからだ。当然、発言をすることなどない。ただ、画面上を流れる文字を眺めているだけだ。そこで何を知ろうとも、誰にも漏らすことはしない。僕には全く関係がない。


 Aは当初のイメージ通り、王道主人公の4人に率いられた正統派グループ。ルーム内での会話は4人を中心として展開されるものの、僕以外の全員が会話に参加している。クラブ活動に参加しているメンバーも多いため、イベント開催の頻度は低く、基本的には身体を動かすアミューズメント施設で遊んでいるようだ。

 Kの方も悪い意味で当初のイメージと変わらない。加賀と住吉をトップとした専制君主制が布かれている。佐々木と岸田を含めた4人以外に発言権はなく、その他大勢は眺めていることしかできない。そして、4人の決定は絶対で反意を示すことなどできない。いや、そもそも、ある意味でカリスマ性が感じられる4人に従うことで、自分の地位を担保しているメンバーが多い。よく徒党を組んで下校しているところを見掛けるが、ほぼ毎日のようにカラオケやゲームセンターなどに行っているらしい。

 最初の頃、反抗的な態度をとってAに移動しようとしたメンバーがいたが、その直後1週間ほど学校を休み、登校してきた後はすっかり従順になっていた。何があったの知らないし、聞きたくもない。


 このまま、均衡が取れたまま残り11ヶ月が過ぎれば何の問題もない。ただ、火種は燻っている。
 元幼馴染の青崎は、明らかに佐々木を意識している。グループが違うため一緒にどころか、話しをしているところすら目にしたことはない。ただ、視線を佐々木に奪われていることが多いし、佐々木が一人のときには近くにいる。恋愛経験が少ない、いや、皆無の僕にすら分かるレベルだ。おそらく、気付いている人は必ずいる。

 そして、加賀の青崎を見る目。敵対心を隠しもせず睨んでいる。青崎と加賀は誰が見ても美少女といえる。ただ、対極の存在でもある。対抗心があっても不思議ではない。

 そして真鍋。まあでも、これは特に問題にはならないか。


 いずれにしても、クラスメートの人間関係など僕には関係ない。
 そんなことより、素早く教室を脱出しなければならない。今日の放課後、AとK両方のグループがそれぞれどこかに遊びに行くらしい。つまりクラスメートは全員参加。でも、当然のように僕は不参加。