NPC(ノンプレイヤーキャラクター)


>あさひ:き・た・が・わ・くーん

 その夜、情報収集のためにインしていたKのルーム内で、再び自分の名前が呼ばれた。当然のように無視したが、管理者からは入室しているメンバーが分かるため、見ていることは把握されている。だからといって、反応することはしない。

>さーや:どうだったー、真鍋くんは?情報流してあおってみたんだけど?>るいるいのように殴られなかったー?
>るいるい:やめろ、思い出すだけでムカつく!!
>まい:でも真鍋っち昼からいなかったよね?
>あさひ:まさかの返り討ち?
>るいるい:北川にはムリ

 やはり、Kのルームに参加していることを、コイツらが意図的に流したのか。2つのルームに参加していたのは確かだし、本当のことではある。でも、わざわざ真鍋に情報を流したとういことは、オレをハメようとしていたとしか思えない。考えただけで腹が立ってくる。

>あさひ:まあいーけどさ
>さーや:あーあれの実行日は明日ねーヒマだし
>まい:19まるまる駅前集合だかんねー
>るいるい:バレたらヤバいし、オレらだけでいーか?
>あさひ:だな、多いと目立つしな
>さーや:じゃあ、みんなは自由参加ねー

「明日?」
 画面上の文字を読みながら唖然とする。明後日のはずだったのに、「ヒマだから」という理由で明日に変更になってしまった。桐島の協力が得られないどころか、完全に無視されてしまっている。何か方法はないものだろうか?

 ずっと考えてみたものの、本人が気にしていない以上、何の対策も講じることができない。


 翌日、教室は別のことで大騒ぎになっていた。日向がルームを抜けたことについて、グループAのメンバーが話し合っていたのだ。大勢が集まっている方を見ると、コチラを睨み付けている真鍋と目が合った。オレもルームを抜けているし、何か変な妄想を膨らませているのかも知れない。しかし昨日のことがあるためか、詰め寄ってくることはなかった。

「おはよう、陽斗君」

 オレに挨拶をして教室に入って来る日向。その声が聞こえた瞬間、真鍋をはしめとしたグループAのメンバーが振り向いた。日向は気にした素振りも見せず自分の席へと歩いて行き、「おはよう」といつも通りに挨拶をする。慌てた様子で日向の席を取り囲むグループAのメンバーたち。この場で質問攻めにしている皆は、日向の個人的な連絡先を知らなかったのだろうか。

 愛想笑い全開で対応している日向は、もうあのグループに戻ることはないだろう。ありのままの自分を受け入れ、先進むことを決めたのだと、改めて強く感じる。きっと今の日向は、他人の言動や誘惑に流されることはない。そうだ、桐島も点数稼ぎのようなオレの言葉に耳を貸すはずがない、か。

 ふと窓際の一番前を見ると、桐島はイヤホンを耳に突っ込み、片肘を突いて外を眺めていた。