「あのさ、確かに僕はクズかも知れないけど、真鍋君も似たようなものだよね?」
無意識のうちに口から放たれた言葉。
「はあ!?
何を言ってるんだ?クズはオマエだけだろ!!
何度も言わせんなよ。オマエは幼馴染を見殺しにした裏切り者で、幼馴染のポジションを利用して青崎さん近付く害虫だ。オレでさえ二人きりで登校したことがないのに、何でオマエみたいな冴えないヤツが並んで歩いてるんだよ!!ああ、もういい。全部バラす。オマエの悪事を全部、教室で喋ってやる。二つのルームに入っていることも全部。今日からオマエは一人ぼっちだ。ハハハッ!!いやもう、すでにボッチか!!ハハハッ!!」
ああ、何かもう面倒臭い。
「・・・クソが」
「は!?」
「オレは確かに卑怯者のクズだ。そんなことは、とっくに分かってんだよ。
日向がオマエではなく佐々木が好きだってことも知っていたし、ウソ告されることも知っていたさ。それを日向に教えなかったし、ウソ告の現場で佐々木を止めることもしなかった。そんなクズだ。そんなことは分かっている。でも、クズ度合いなら、オマエも似たようなもんだろ」
突然話し始めたオレに驚き一瞬たじろいだものの、真鍋はすぐに顔を真っ赤にして反論した。
「オマエと同じはずがないだろ!!オレは青崎さんのためを思って、ずっと―――」
「オレは、オレはずっと見ていただけだった。でもな、ちゃんと見ていたんだ。オマエ、日向のことが好きだろ?まあ、ほとんどのヤツは、もうとっくに知ってるけどな。気付いてなかったのは、佐々木に夢中だった日向ぐらいだ」
「だ、だったらどうだって言うんだ。オレが一番青崎さんに相応しいし、どう考えてもオレしかいないだろ!!」
真鍋の言い分に、思わず大きなため息が出る。
「アホか。オマエのは自分勝手な妄想だろ。
これまで、オマエはいったい何をしてきた?
ウソ告が発覚したあと、オマエが佐々木を殴ったのは義侠心でもなんでもない。オレは、オマエが動画を見て表情を変えたのを見逃してない。オマエは「キスしかさせてくれない」、のところで逆上して佐々木を殴った。ただの嫉妬に狂ったクソだよ。停学は当然の罰だ。日向のために怒って殴ったんじゃない。ただの見苦しい男の嫉妬だ」
「う、うるさい!!」
激しく左右に頭を振る真鍋を無視し、そのまま話しを続ける。
「それに、今のこれは何だ?
こんなところまで連れて来て、散々詰った挙句、弱味を握ったから日向に近付くな?
何だそれ。
秘密をバラされたくなけりゃ、これからずっと関わらずにいろ?
アホか。
本当に日向が好きなら、さっさと告ればいいだろ?
告白してもフラれることが分かってるから、仲間のフリして近くから監視か?
くだらない。
確かにオレは幼馴染を助けなかった卑怯者だ。
日向の優しさに救われているクズだ。
でもな、オレはそのことを知っている。
自分自身がダメなヤツだと認めている。
オマエも自分が嫉妬に狂ったアホだと気付け。
情けない自分を認めろ。
自分の現在地を認めないと、先には進めないんだよ」
って、本当にオレも同じだな。
「くそっ」
言葉を失って項垂れる真鍋。オレはそんなヤツを置き去りにして、体育館裏を後にする。もう話すことはないし、これ以上ここにいる理由はない。
5時間目のチャイムギリギリで教室に戻ったオレが前方に視線を移すと、加賀と住吉がコチラを見て少し驚いた表情をしていた。オレが平然と帰って来たことが不思議だったのかも知れない。それとも、真鍋が一緒ではないことに疑問を抱いたのだろうか。
結局、真鍋は午後の授業に姿を見せることはなかった。



