>あさひ:真鍋に期待するかwww
この書き込みの意味は、月曜日の昼休憩に分かった。
「北川、ちょといいか」
同じクラスになって3ヶ月。真鍋に話し掛けられた記憶はない。つまり、何かのきっかけで認識されたということだ。これまで全く接点が無かったにも関わらず、この敵意がこもった目。朝から睨まれていたのは、つまり、そういうことなのだろう。名前を呼ばれている以上、いつものように聞こえないフリをすることは許されそうにない。
「僕に何か?」
と、とぼけてみたものの、逃がしてはくれないようだ。目の前に仁王立ちし、高圧的な態度で見下ろしている。停学明けにも関わらず、意気軒昂とは恐れ入る。チラリと視線を向けると、加賀と住吉がクツクツと声を抑えて笑っていた。
「いいから、ちょっと来いよ」
仕方なく椅子から立ち上り、先に教室を出て行った真鍋の後を追う。少し振り返って二人の様子を窺うが、覗き見するつもりはないらしい。
その後、真鍋は一言も発することなく体育館の裏まで移動した。昼休憩に限らず、校舎から一番遠いエリアのため、生徒がここに来ることはほとんどない。完全に校舎やグランドから見えなくなると、真鍋は勢い良く振り返った。
「北川、オマエ、青崎さんがウソ告されることを知っていたんだろ」
「えっと、何のこと?」
とりあえず、知らないフリをして答える。迂闊にメインキャラクターに関わり、表舞台に引っ張り出されるなど真っ平御免だ。
「はあ!?そんなことあるわけがないだろ!!あっちのグループのヤツから聞いたんだよ。オマエがあっちのルームに参加してるってな!!」
やはり、加賀や住吉が仕掛けたのはコレか。それでも、僕には関わるつもりがない。
今にも殴り掛かってきそうな真鍋に対し、表情を変えず首を傾げる。
「僕には何のことか分からないんだけど?」
「オマエっ!!」
僕の肩をつかみ、真鍋は握り締めた拳を振り上げる。その状態でワナワナと震えた後、僕の体をドンと押して突き放した。
「クズが!!オマエ、佐々木と同じゴミヤローだ!!ウソ告だと分かったら、どれだけ悲しむか分かっていただろ。大勢の前で笑われたら、どれだけ傷付くか想像がついたはずだ。それなのにオマエは、知っていて黙っていた。しかも、俺たちのルームにも参加しておいて。最悪だ。本当に最低な人間だよオマエは!!」
確かに、それは否定できない事実ではある。
僕は知っていて何もしなかった。でも、全く関わりが無い人のために、僕が矢面に立つ必要があるのか?僕はずっと息を潜めて過ごしてきた。誰からも注目されることもなく、誰からも期待されることもなく、ひっそりと村人をしてきたんだ。ずっとステージの中心で輝いていた人間に、とやかく言われる筋合いはない。メインストリーはメインキャストが解決すべきだ。それなのに、なぜ僕が責められなくてはいけないんだ?
「あのう、誰のこと?」
「オマエのことだろ!!
それに、オマエ、青崎さんの幼馴染なんだってな。それなのに、平然と裏切って。あんなクソみたいなヤツラと一緒に笑っていたんだろうが!!」
あの日の夜、日向はずっと泣いていたな。
疎遠になって、話すことすらなかったけど、やっぱ幼馴染なんだなって思った。
外見ばかりを気にする悪いところも、意地っ張りなところも、独りで立ち向かう強い心も、こんな僕に声を掛けてくれる優しいところも。一緒にいると分かる。他人になってしまったと思っていたけど、やっぱり日向は幼馴染なんだなって。
「幼馴染の立場を利用して、裏切り者のくせに、卑怯者のくせに、クズのくせに、青崎さんに近付きやがって!!」
何なんだよ。
「一緒に登校することもあるんだってなあ。どんな気持ちで一緒にいるんだ。ウソだと知っていて黙っていたオマエが、青崎さんに近付くんじゃねえよ!!」
ああ、イライラする。
「今後、青崎さんに近付かないと約束するなら、ウソ告のことは黙っていてやる。今まで通り他人として振る舞うなら、ここだけの話にしてやってもいい。クラス中に卑怯者だと知られたくないだろ。オマエがクズなことには違いないが、教室の中にいることを許してやろう。なあ、そうするよな!!」



