日曜日の夜、いつものように自室でスマートフォンとパソコンを立ち上げ、それぞれのルームに入って会話を眺めていた。明日から佐々木と真鍋が登校するらしく、どちらのルームもその話題で盛り上がっている。
そんな中、話題が途切れたKのルームで、突然自分の名前が表示された。
>あさひ:北川くーんいるよねー?
>さーや:管理者はさあオンライン中かどうか分かるんだよー
>あさひ:オマエさあアッチにも入ってるだろ?
>さーや:バックレてもダメだよーもうウラ取ってるしねー
「マジか」
突然のご指名に、スマートフォンの画面を眺めていた僕は仰向けに寝転んだ。
まあ、今までバレていなかった方が奇跡だった。しかも、オンライン中かどうかも分かるらしい。万事休すか。とはいえ、この状況でノコノコと出て行くわけにもいかない。
「ジャーン」とか擬音付きで登場しようかとも思ったが、どう考えても場違いだ。それに、何のための呼び出しなのかが分からない。
>るいるい:ガン無視www
>さーや:まーいーんだけど
>あさひ:幼馴染のピンチをスルーしたスライムレベルのクズだからなwww
>るいるい:見てるだけなら最後まで見てるだけな
>あさひ:よけーな正義感とか見せんなよ
>さーや:ダイジョーブっしょそんなコトできるなら幼馴染ちゃんが笑いモノになる前にどーにかしたっしょ
>あさひ:そりゃそーだなwww
「スライムレベルのクズって。まあ、確かにそれは否定できないけど。桐島には直接、卑怯者のクズだと言われたし」
画面を走る文字を目で追いながら自嘲する。どう言われても仕方がない。本当ことなんだから。
>さーや:もう北川はいーや
>あさひ:真鍋に期待するかwww
「真鍋?」
>まい:もーいい?
>さーや:いーよー
>まい:次のターゲットは桐島だよー
>るいるい:窓際の一番前?ショートボブの可愛い子
>あさひ:オンナだけは詳しいな
>まい:それなー
>さーや:でなにがオモシロイの?
>まい:コイツさ路上ライブやってんの
>あさひ:マ???
>まい:アーケードで路上ライブしてるんだよ
>さーや:あーあらしに行くってこと?
>るいるい:「応援に行く」のマチガイな
>あさひ:学校の外かーそりゃいーな
>るいるい:憂さ晴らし
>さーや:だねーいつ行く?
>あさひ:水曜日がヒマだな
>さーや:じゃあそれでいい?
>るいるい:オッケー
>まい:りょ
「桐島が次のターゲット?
路上ライブを荒らしに行く?
おいおい、シャレになってないけど」
ローテーブルの上にパソコンと並べて置いていたスマートフォンを手に取る。何度確認しても「桐島の路上ライブ」と表示されていた。
日向がやられたウソ告の場面が脳裏に浮かび、気分が悪くなる。あの常軌を逸した行動を平然と実行できるヤツラに、限度とか常識という概念は存在しない。もちろん、他人の気持ちを慮る気もない。しかも、今度は学校の外だ。生活指導の先生もいない。誰も止める者がいない。歯止めが利かない状況では、何をするか分かったものではない。
僕はコレも見ていないフリをするのか?
自分には関係ないと、傍観者を決め込むのか?
幼稚園の庭に落ちていた、木の枝できたエクスカリバー。
聖剣を天に突き上げて宣言した僕。
ジャングルジムのてっぺんに立つ僕は、どんな未来を想像していたのだろうか。



