NPC(ノンプレイヤーキャラクター)


 奈落―――これ以上ないどん底。
 無意識に動く指が、何度も何度も、同じ言葉を検索する。


 なぜ、こんなことになった?
 ああ、もっと頑張れば良かった。
 あのとき、もう少し努力できたはずなのに。
 悔しい、悔しい。
 後悔と自責の念が高く積み上がり、頂点に達したときにバランスを崩して倒れる。

 次に深い穴を掘り、全ての不平不満を放り込んだ。

 自分は何も悪くない。
 環境が悪かった。
 先生がもっと本気で注意してくれなかったのが悪い。
 口先ばかりで何もしてくれなかった親が悪い。
 あっという間に穴はいっぱいになり、同時に吐き出すものも無くなる。
 
 平坦になった心は自問自答を始めた。

 自分の存在意義、存在理由。
 誰かに必要とされているのだろうか。
 誰かの役に立つことができるのだろうか。
 いったい、何のために生きているのだろうか。
 生きている意味はあるのだろうか。
 同じ場所をグルグル回り続け、疲れ果てて倒れるたときに答えが見付かる。

 
 ―――ああ、そうか。
 
 俺は、僕は必要ないのかも知れない。
 誰かの役に立つことなどないかも知れない。
 僕に生きている価値などないのかも知れない。
 この世界に、僕は必要ないかも知れない。
 そうか、必要ないんだ。
 いてもいなくても、誰にも、何にも関係がない。


 否応なしに自覚する。
 僕はメインキャラクターではない―――と。

 真実に気付いてしまった僕は、その場から動けなくなった。
 努力することをやめた。
 他人と関わることをやめた。
 考えることをやめた。
 同じ動作しかしなくなった。
 目立たないように、他人の邪魔にならないように。
 メインキャラクターに関わらないように、息を潜め限りなく存在を消した。
 そう、まるでRPGに登場する村人のように。
 町の入り口に立つ町人のように。
 最初だけ話し掛けられるだけの、誰も操作していないキャラクターになった。

 それが、僕にはお似合いだから。
 それが、僕に与えられた役目だから。
 それくらいしか、僕には許されるはずがないのだから。