命尽きるこの日まで





——狙うは将軍の首。

お邦ちゃんが俺の目の前からいなくなった日から季節が一周まわった大暑の日。俺は村を出た。

きっと失敗するだろう。家族は反逆者の親族として処罰されるだろう。

もう、いいんだ。ふたつき前から母さんの様子がおかしい。お邦ちゃんが体調を崩し始めたときと全く同じ症状なんだよ。父さんも三日前に血を吐いた。下の兄さんは世の中に絶望して昨日首を吊った。

家を抜け出したとき、上の兄さんは少し眉尻を下げながら俺を一目見た。兄さんは口を開いて言ったんだ。
こうやってお前が何も言わずに出ていくのを見るのは二回目だな。……俺のことは案ずるな。父さんと母さんのことは考えるな。お前が選んだ道だ、俺ぁ泥舟に乗ったつもりさ。行ってこい、ぜってぇに帰ってくるなよ、って。
だからね、俺は問うたんだ。お邦ちゃんの葬儀の日、知ってたの、と。
兄さんは破顔しただけだった。でも、お邦ちゃんも俺もわかっちまうよね。兄さんのその微笑みは察してほしいときのだって。

だから俺はゆっくりと歩み出した。つま先はもう、前しか向くことができない。もう、帰らない家に背を向けて、俺は進むんだ。

上の弟に逝かれちまった次の日に下の弟にも行かれちまうとは、兄貴失格だな。
そよ風に運ばれ、そう、ポツリと聞こえたのはきっと俺の幻聴だろうね。視界の周りが滲んだのもきっと俺の気のせいだよね。
最後だから、この村を愛したから。胸いっぱい、苦しいくらいたくさん、少し熱くて爽やかな空気を吸い込んだ。