島村(しまむら)庸介(ようすけ)はこの春、高校三年生になった。

 クラス編成では、幼なじみの大里(おおさと)秀二(しゅうじ)と同じクラスになれた。受験生ではあるが、相応に楽しめる一年になりそうだと感じていた。推薦狙いの彼は、受験生である現実にも、大した緊張感を持っていなかった。

 外見は至って普通だ。特に髪を染めるわけでも、着崩してだらしない格好をしているわけでもない。夜な夜な歩き回って女の子とよろしくやっているわけでもなかった。

 成績も悪くはなかった。だが、その考え方には、少々いい加減さが目立つ少年だった。

 今の時代、一生懸命やっても報われるものじゃない。なら、何事も適当にあしらい、それなりにこなして、楽しく過ごしたい。

 それが庸介の考え方だった。


 ガムシャラにしない。
 必死にならない。
 無理しない。
 勉強も、スポーツも、人間関係も。
 暑苦しいのはすべてお断り。
 来る者拒まず、去る者追わず。
 そして、恋も――