雨音ラジオで君を待つ

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雨が降っても、空気はむしっとしていて全然涼しくならない。
それでも、雨粒の向こうに、ほんの少しだけ明るさがにじんで見える。


「――もうすっかり夏ですなぁ。まーじで暑くね? 夏って毎年こんなだったっけ? って毎年思ってるわ、俺。雨降っても涼しくならんしさ~。……あ、モナカさん『そんな時でも自分は外回りです』って……マジすか。俺、社会出るのやめたくなってきた……。はい、ってことで! そろそろ終わりにしよっかな~。晴歌、なんかひと言ある?」

「え? 私? ないよ、ないない、そんなん急にムリ」


そう言って笑ってごまかすけど――すぐに、コメント欄が光り始める。


《ハレカちゃん、なんか言って~!》
《今日もひと言ほしいな》
《むしろナツキよりハレカの声が聞きたいです!》


……ほんとに、みんなそういうとこだけ反応早いんだから。


「……えぇ、もう……」


ぼやきながら、私は少しだけスマホに顔を近づける。


「……じゃあ、ひと言だけ」


照れくさいのをごまかすように、そっと息を吸った。
まるでいつかの自分に向けるように、言葉を選ぶ。


「今日も雨だけど――誰かが、どこかで少しでも笑えますように。
声にならない気持ちを抱えて、この雨音の中で迷子になったとき……ふと、この声に耳を傾けてくれたらうれしいなって思いながら、しゃべってます。……おしまい!」


その一言に、夏生が「おー、いいじゃん」と小さく笑った。
雨音ラジオは、今日も変わらず続いていく。
夏の音と、雨の音と、少しずつ素直になっていくふたりの声を乗せて。






――ピコン

《この前の配信、聴いたよ。びっくりした。泣いちゃった。》
《でも……すごくうれしかった。》
《晴歌ちゃん……幸せになってね。幸せに……なろうね。》

        ――アメノナカ、こと、雨衣