今までずっと、自分が何かを言うことが、間違ってるような気がしてた。
ばーちゃんの悲しそうな顔を見てると、自分の痛みなんて口に出しちゃいけない気がして……黙ることしかできなかった。
言いたいことがなかったわけじゃない。
でも――言ったところで、誰かが楽になるわけでもない。
それより、何も言わないほうがいいんだって、自分に言い聞かせてた。
でも……ハレカの姿を見て、俺も、誰かに届く声を出してみたいって思った。
ハレカみたいに――たったひと言でも、誰かの支えになれるような言葉を。
うまく言えなくてもいい。完璧じゃなくてもいい。
今の気持ちを、自分の言葉で、誰かに伝えてみたいって。
誰かの力になれるかどうかは、正直わからない。
でも、それでも――俺も、声を出してみたくなった。
……それが、今の俺にできることかもしれないって、思ったんだ。
リハビリの帰り道、病院の中庭をぼんやり見ながら、ふと思い立って足を止めた。
……やっぱり、先生に話してみようかな。
それだけのことに妙に緊張してる自分がいた。 でも、このまま黙ってるのはなんか違う気がした。
受付前のソファで休憩していた右京先生を見つける。
白衣を脱いで、コーヒー片手に何か資料を読んでいたけど、俺の姿に気づいて顔を上げた。
「……どうかしましたか?」
いつもと変わらない落ち着いた声。
その一言が、背中をそっと押してくれた気がした。
「俺さ……先生が言ってた『この先誰かに生きる希望を与えることだってあるかもしれない』ってのは……やっぱよくわかんない。だけど……こんな俺でも――」
一度言葉が詰まる。
右京先生は黙っていてくれる。ただ、じっと聞いてる。
「……声くらいなら出してみてもいいのかなって、最近ちょっとだけ……そう思ったんだ」
声は小さかったけど、言った瞬間、心が少しだけ軽くなった気がした。
右京先生はほんの少しだけ目を細めて――けれど、表情は相変わらず読めないまま、静かに言った。
「君の声が誰かの希望になるかもしれませんね」
「え――」
静かな声。だけど、はっきりと伝わってくるものがあった。
「――もし興味があるなら、ひとつ提案があります」
先生は、コーヒーをひとくち飲んでから、視線だけこちらに向けて続けた。
「今は、個人でもラジオ配信ができるアプリがありますよね。名前も顔も出さなくていい。スマホひとつで、どこからでも、自分の言葉を届けられる」
一瞬、ぽかんとした俺の顔を見て、先生は小さく息をついた。
「……試してみるだけでも、いいと思いますよ。言葉を外に出すことで、自分の気持ちに気づくこともある。君が今、『誰かに届けたい』と思った気持ちを――ちゃんと、言葉にしてみるっていうのはどうですか?」
ばーちゃんの悲しそうな顔を見てると、自分の痛みなんて口に出しちゃいけない気がして……黙ることしかできなかった。
言いたいことがなかったわけじゃない。
でも――言ったところで、誰かが楽になるわけでもない。
それより、何も言わないほうがいいんだって、自分に言い聞かせてた。
でも……ハレカの姿を見て、俺も、誰かに届く声を出してみたいって思った。
ハレカみたいに――たったひと言でも、誰かの支えになれるような言葉を。
うまく言えなくてもいい。完璧じゃなくてもいい。
今の気持ちを、自分の言葉で、誰かに伝えてみたいって。
誰かの力になれるかどうかは、正直わからない。
でも、それでも――俺も、声を出してみたくなった。
……それが、今の俺にできることかもしれないって、思ったんだ。
リハビリの帰り道、病院の中庭をぼんやり見ながら、ふと思い立って足を止めた。
……やっぱり、先生に話してみようかな。
それだけのことに妙に緊張してる自分がいた。 でも、このまま黙ってるのはなんか違う気がした。
受付前のソファで休憩していた右京先生を見つける。
白衣を脱いで、コーヒー片手に何か資料を読んでいたけど、俺の姿に気づいて顔を上げた。
「……どうかしましたか?」
いつもと変わらない落ち着いた声。
その一言が、背中をそっと押してくれた気がした。
「俺さ……先生が言ってた『この先誰かに生きる希望を与えることだってあるかもしれない』ってのは……やっぱよくわかんない。だけど……こんな俺でも――」
一度言葉が詰まる。
右京先生は黙っていてくれる。ただ、じっと聞いてる。
「……声くらいなら出してみてもいいのかなって、最近ちょっとだけ……そう思ったんだ」
声は小さかったけど、言った瞬間、心が少しだけ軽くなった気がした。
右京先生はほんの少しだけ目を細めて――けれど、表情は相変わらず読めないまま、静かに言った。
「君の声が誰かの希望になるかもしれませんね」
「え――」
静かな声。だけど、はっきりと伝わってくるものがあった。
「――もし興味があるなら、ひとつ提案があります」
先生は、コーヒーをひとくち飲んでから、視線だけこちらに向けて続けた。
「今は、個人でもラジオ配信ができるアプリがありますよね。名前も顔も出さなくていい。スマホひとつで、どこからでも、自分の言葉を届けられる」
一瞬、ぽかんとした俺の顔を見て、先生は小さく息をついた。
「……試してみるだけでも、いいと思いますよ。言葉を外に出すことで、自分の気持ちに気づくこともある。君が今、『誰かに届けたい』と思った気持ちを――ちゃんと、言葉にしてみるっていうのはどうですか?」
