夏生は「マジ勘弁して」と笑っていた。
テンポのいいやりとりが続いて、スマホの画面は次々に反応でにぎわっていく。
この時間だからか、今日は普段よりコメントが多い気がした。
でも――いつもなら真っ先に現れるはずの『アメノナカさん』の名前が、まだどこにもなかった。
「――でね、ここからが超大事なことなんだけど……なんと今日は、俺のパートナーから話があるんだわ」
ドキン――。
頭が一瞬まっしろになる。
……いよいよだ。
指先が少しだけ震える。声を出せるのか、わからない。
でも――逃げたくはなかった。
夏生が私をチラ、と見ては、フッと優しく笑う。
「いつも聴いてくれてる人は知ってると思うけど……ほら、俺のパートナーってすっげー恥ずかしがり屋でさ。今まで頑なに一言もしゃべんなかったじゃん? でも、ある人にどうしても伝えたいことがあるんだって。
……ある人っていうのは、パートナーの妹さんで。今は病院にいて、眠ってる。
だからまぁ、聞けてるかどうかは――正直わかんない。
でも……俺は、届くと思ってんだよね。なんとなく、だけどさ。
聞こえてる気がするっていうか。うん……絶対、聞いてると思う。
でさ。俺、思うんだ。
ちゃんと気持ちを言葉にするって、やっぱ大事だよ。
どんな相手でも、どんな状況でも。
だから今日、パートナーがこうして話そうって決めたのって――すげぇ勇気いると思うけど、意味のあることだと思ってる。
……みんなは、どう思う?」
コメント欄に、いくつかの《うん》と《応援してる》が流れる。
私は、ゆっくり息を吸って、吐いた。
そして、夏生が差し出すスマホ前で、震える声をどうにかつなげる。
「……こんばんは。ハレカです。急にお邪魔しちゃって……ごめんなさい。今日は……どうしても伝えたいことがあって、話します」
……言えた。ちゃんと、言えた。
声が少しだけ震えていたけれど、止まらなかった。
《ハレカちゃん、がんばれー!》
コメント欄の文字が、そっと背中を押してくれる。
話そうとしてることは、思い出すだけでも苦しくなる。
でも、それを言葉にするって決めたのは、自分だ。
自分の気持ちを、ちゃんと伝えたいって――心から、そう思ったから。
小さな震えが指先に残っている。 でも、今ならきっと、大丈夫。
私は、スマホに向かって、小さく深呼吸をした。
テンポのいいやりとりが続いて、スマホの画面は次々に反応でにぎわっていく。
この時間だからか、今日は普段よりコメントが多い気がした。
でも――いつもなら真っ先に現れるはずの『アメノナカさん』の名前が、まだどこにもなかった。
「――でね、ここからが超大事なことなんだけど……なんと今日は、俺のパートナーから話があるんだわ」
ドキン――。
頭が一瞬まっしろになる。
……いよいよだ。
指先が少しだけ震える。声を出せるのか、わからない。
でも――逃げたくはなかった。
夏生が私をチラ、と見ては、フッと優しく笑う。
「いつも聴いてくれてる人は知ってると思うけど……ほら、俺のパートナーってすっげー恥ずかしがり屋でさ。今まで頑なに一言もしゃべんなかったじゃん? でも、ある人にどうしても伝えたいことがあるんだって。
……ある人っていうのは、パートナーの妹さんで。今は病院にいて、眠ってる。
だからまぁ、聞けてるかどうかは――正直わかんない。
でも……俺は、届くと思ってんだよね。なんとなく、だけどさ。
聞こえてる気がするっていうか。うん……絶対、聞いてると思う。
でさ。俺、思うんだ。
ちゃんと気持ちを言葉にするって、やっぱ大事だよ。
どんな相手でも、どんな状況でも。
だから今日、パートナーがこうして話そうって決めたのって――すげぇ勇気いると思うけど、意味のあることだと思ってる。
……みんなは、どう思う?」
コメント欄に、いくつかの《うん》と《応援してる》が流れる。
私は、ゆっくり息を吸って、吐いた。
そして、夏生が差し出すスマホ前で、震える声をどうにかつなげる。
「……こんばんは。ハレカです。急にお邪魔しちゃって……ごめんなさい。今日は……どうしても伝えたいことがあって、話します」
……言えた。ちゃんと、言えた。
声が少しだけ震えていたけれど、止まらなかった。
《ハレカちゃん、がんばれー!》
コメント欄の文字が、そっと背中を押してくれる。
話そうとしてることは、思い出すだけでも苦しくなる。
でも、それを言葉にするって決めたのは、自分だ。
自分の気持ちを、ちゃんと伝えたいって――心から、そう思ったから。
小さな震えが指先に残っている。 でも、今ならきっと、大丈夫。
私は、スマホに向かって、小さく深呼吸をした。
