「......っ、でも.........そのせいで雨衣が......倒れて......」
「結果的にそーなっちゃっただけで、晴歌に全部の責任があるかっつーと、俺は違う気がする」
「でも......!」
「晴歌はさぁ、なんでそんなに自分を責める? まるで、自分が『悪』じゃなきゃダメみたいだ」
その一言に、息が止まりそうになった。
「……悪じゃなきゃダメ、なんて……そんなこと……」
否定したかった。
でも、それ以上の言葉が出てこなかった。
だって――図星だったから。
雨衣を責めるしかない自分が嫌いだった。
全部、自分が悪かったことにすれば、雨衣を責めずにすむ。キレイな私でいられる。
自分だけが我慢すれば、きっと世界はうまく回るって……ずっと、そうやってやり過ごしてきたから。
そんな私を、夏生がまっすぐ見つめてくる。
「それってさー、『逃げ』だよね」
逃げ……――。
ズキッと、胸が痛んだ。いつも優しい夏生が、はっきりとそう言ったから。
夏生の目は、怒っているわけでも、呆れているわけでもない。ただ――正直だった。
「『晴歌が悪い』で終わらせたら、そりゃー楽っしょ。でもさ――晴歌はそれでいいわけ?」
外の雨音が、土管の中に反響している。まるで、私の心のざわつきを代弁するみたいに。
耳の奥で、夏生の声だけが澄んで響いていた。
「このまま、自分の気持ちを押し殺して、自分を責めて生きてくの?」
その言葉に、胸のどこかがきゅっとつかまれた気がした。
触れてほしくなかった場所を、迷いもなく言葉で突かれた気がした。
土管の外では、まだ雨が降り続いている。
その音は途切れることなく響いて、どこにも逃げ場をくれない。
けれど――夏生の声だけは、ちゃんと私にまっすぐ届く。
「……どうすればいいの……」
声が掠れる。
「雨衣に言いたかったことは言ったはずなのに……全然スッキリしなかった。ううん、前よりもっと……心が痛い。やっぱり言わない方がよかったんじゃないの? 私の本音は……誰かを傷つける」
ひどいことを言った。雨衣の気持ちなんか考えずに、吐き捨てるように。
その結果が、これだ。
いつの間にか目にたまっていた涙がぽつんと一筋零れ落ちる。
なんで。どうして、涙なんか……。
瞬きをした。
でも、にじんだままの景色は戻らない。
「スッキリしないってことはさ、晴歌が妹ちゃんに本当に言いたかったことじゃなかったんじゃない?」
「え――」
「そのときの勢いでぶつけた言葉ってさ、あとになって思い返すと、なんかちょっと違ったかも……ってなること、あるじゃん。
きっと晴歌も、本当は――もっとちゃんと、伝えたい気持ちがあったんじゃないかなって。
今なら、それが何だったか……自分でも、少しずつ見えてきてるんじゃない?」
夏生がそっと小さなタオルを私の頬にあてがった。
あのとき、私を包んだタオルの匂いがした。
私の想いを「大事だ」って――そう言ってくれた日の。
「――もう一回、伝えてみなよ」
「結果的にそーなっちゃっただけで、晴歌に全部の責任があるかっつーと、俺は違う気がする」
「でも......!」
「晴歌はさぁ、なんでそんなに自分を責める? まるで、自分が『悪』じゃなきゃダメみたいだ」
その一言に、息が止まりそうになった。
「……悪じゃなきゃダメ、なんて……そんなこと……」
否定したかった。
でも、それ以上の言葉が出てこなかった。
だって――図星だったから。
雨衣を責めるしかない自分が嫌いだった。
全部、自分が悪かったことにすれば、雨衣を責めずにすむ。キレイな私でいられる。
自分だけが我慢すれば、きっと世界はうまく回るって……ずっと、そうやってやり過ごしてきたから。
そんな私を、夏生がまっすぐ見つめてくる。
「それってさー、『逃げ』だよね」
逃げ……――。
ズキッと、胸が痛んだ。いつも優しい夏生が、はっきりとそう言ったから。
夏生の目は、怒っているわけでも、呆れているわけでもない。ただ――正直だった。
「『晴歌が悪い』で終わらせたら、そりゃー楽っしょ。でもさ――晴歌はそれでいいわけ?」
外の雨音が、土管の中に反響している。まるで、私の心のざわつきを代弁するみたいに。
耳の奥で、夏生の声だけが澄んで響いていた。
「このまま、自分の気持ちを押し殺して、自分を責めて生きてくの?」
その言葉に、胸のどこかがきゅっとつかまれた気がした。
触れてほしくなかった場所を、迷いもなく言葉で突かれた気がした。
土管の外では、まだ雨が降り続いている。
その音は途切れることなく響いて、どこにも逃げ場をくれない。
けれど――夏生の声だけは、ちゃんと私にまっすぐ届く。
「……どうすればいいの……」
声が掠れる。
「雨衣に言いたかったことは言ったはずなのに……全然スッキリしなかった。ううん、前よりもっと……心が痛い。やっぱり言わない方がよかったんじゃないの? 私の本音は……誰かを傷つける」
ひどいことを言った。雨衣の気持ちなんか考えずに、吐き捨てるように。
その結果が、これだ。
いつの間にか目にたまっていた涙がぽつんと一筋零れ落ちる。
なんで。どうして、涙なんか……。
瞬きをした。
でも、にじんだままの景色は戻らない。
「スッキリしないってことはさ、晴歌が妹ちゃんに本当に言いたかったことじゃなかったんじゃない?」
「え――」
「そのときの勢いでぶつけた言葉ってさ、あとになって思い返すと、なんかちょっと違ったかも……ってなること、あるじゃん。
きっと晴歌も、本当は――もっとちゃんと、伝えたい気持ちがあったんじゃないかなって。
今なら、それが何だったか……自分でも、少しずつ見えてきてるんじゃない?」
夏生がそっと小さなタオルを私の頬にあてがった。
あのとき、私を包んだタオルの匂いがした。
私の想いを「大事だ」って――そう言ってくれた日の。
「――もう一回、伝えてみなよ」
