自室に入ると、もう無理だった。
カバンを放り出すようにベッドへ倒れ込み、ブランケットを引き寄せて体に巻きつける。
くしゅくしゅの毛布が、冷えた体をやっと包んでくれる。
でも、どこか心は凍ったままだ。
ゴロンと寝返りを打った拍子に、視界にカーテンの隙間が入り込む。
その奥には、相変わらずの灰色の空。
ぼたぼたと音を立てる雨粒が、まるでこちらを覗いているようだった。
――言われなくても、私はちゃんと「私」を演じているってば。
窓から目を逸らし、スマホを取り出してアプリをタップする。
今日何度目かの確認だった。
もしかしたらタイミングが合わなかっただけで、配信されているかも……。
そんな風に思ったものの、画面上に新しい配信は表示されなかった。
夏生の嘘つき。
「雨の日は配信してるから」って。
「また来て」って、あんなに軽く笑って言ったくせに。
この怒りが理不尽だってわかってる。
あれは約束じゃなかった。
「絶対」なんて言葉は、どこにもなかった。
夏生のラジオは、私のためのものじゃない。
もともと彼が自分の世界の中でやってたことに、私が勝手に足を踏み入れただけ。
なのに、まるで当然のように会えると思ってた。
今日も、そこにいてくれるって。
何の根拠もないくせに、信じたかった。
……たった二回だ。
「雨音ラジオ」で一方的に知っていたとはいえ、実際に会ったのはたった二回。
それだけの関係で、こんなに感情に振り回されるのも、おかしな話。
わかってる。
いつも、いつだって、悪いのは全部私……。
フッと画面が暗転して、私の顔がスマホに映し出された。
サイアク、サイテー。仏頂面で、素直になれなくて、可愛げのない私。
こんな私、夏生だってすぐにウンザリする。
私に向かって「好きだ」って「かわいー」って言ってくれた。「面白いとか必要ない」って私自身を肯定してくれた。
全部、嬉しかった。……嬉しすぎて、怖かった。
だからなのかな。
ほんの少しでも「裏切られた」って思っただけで、こんなに苦しくなる。
「キミ、いらない」
――言われてないのに、もう聞こえてきた気がした。
雨衣が帰ってきたら――。
偽物で影の私は、きっと夏生からも必要とされない。
カバンを放り出すようにベッドへ倒れ込み、ブランケットを引き寄せて体に巻きつける。
くしゅくしゅの毛布が、冷えた体をやっと包んでくれる。
でも、どこか心は凍ったままだ。
ゴロンと寝返りを打った拍子に、視界にカーテンの隙間が入り込む。
その奥には、相変わらずの灰色の空。
ぼたぼたと音を立てる雨粒が、まるでこちらを覗いているようだった。
――言われなくても、私はちゃんと「私」を演じているってば。
窓から目を逸らし、スマホを取り出してアプリをタップする。
今日何度目かの確認だった。
もしかしたらタイミングが合わなかっただけで、配信されているかも……。
そんな風に思ったものの、画面上に新しい配信は表示されなかった。
夏生の嘘つき。
「雨の日は配信してるから」って。
「また来て」って、あんなに軽く笑って言ったくせに。
この怒りが理不尽だってわかってる。
あれは約束じゃなかった。
「絶対」なんて言葉は、どこにもなかった。
夏生のラジオは、私のためのものじゃない。
もともと彼が自分の世界の中でやってたことに、私が勝手に足を踏み入れただけ。
なのに、まるで当然のように会えると思ってた。
今日も、そこにいてくれるって。
何の根拠もないくせに、信じたかった。
……たった二回だ。
「雨音ラジオ」で一方的に知っていたとはいえ、実際に会ったのはたった二回。
それだけの関係で、こんなに感情に振り回されるのも、おかしな話。
わかってる。
いつも、いつだって、悪いのは全部私……。
フッと画面が暗転して、私の顔がスマホに映し出された。
サイアク、サイテー。仏頂面で、素直になれなくて、可愛げのない私。
こんな私、夏生だってすぐにウンザリする。
私に向かって「好きだ」って「かわいー」って言ってくれた。「面白いとか必要ない」って私自身を肯定してくれた。
全部、嬉しかった。……嬉しすぎて、怖かった。
だからなのかな。
ほんの少しでも「裏切られた」って思っただけで、こんなに苦しくなる。
「キミ、いらない」
――言われてないのに、もう聞こえてきた気がした。
雨衣が帰ってきたら――。
偽物で影の私は、きっと夏生からも必要とされない。
