「わ、私も……妹がいる」


伏し目がちにそう言うと、夏生は目を丸くして「へえ!」と声を上げた。


「え、何歳差?」

「……同じ」

「同じ!?」


「双子なの」と言った瞬間、夏生の目が大きく見開く。


「まーじか。俺双子って初めて会ったわ」

「……そんな、人を珍獣みたいに言わないでよ」


反射的に、ちょっと強めに言ってしまった。


「あ、ごめん。マジで悪気はないんです」


夏生がしょぼんと肩を落とす。
あ、またやっちゃった。
悪気ないってわかってるのに、こういう返し方しかできない。
「気楽に」って玲奈にもいつも言われているのに。
こういうところで「つまんない」って思われるんだ、きっと。
夏生も、もう私と話すの面倒くさくなったかも――。


だけどパッと顔を上げた夏生の顔はキラキラと輝いていて。


「いやでもマジかぁ。そっかー双子だったんだーそっかー」


驚き通り越して感激している様子に、ちょっと引いちゃう。
双子って言っただけなのに?
この人は……なんて言うか……やっぱり変だ。
それでも、私の何のひねりもない話を、こんなふうに楽しそうに聞いてくれる......それだけで、ちょっとだけ嬉しくなった。


「そんで、その双子の妹ちゃんとは仲いいの?」

「え? えっと……――仲はいいよ」


嘘じゃない。
たぶん、きっと、間違ってない。
私たちは喧嘩の一つもしたことがなかった。


「ふゥん。きっと可愛いんだろうなぁ。晴歌の妹なら」

「……可愛い、よ」


胸が痛む。
どんな人でも、雨衣に会えば、雨衣の方を見る。
先生も、同級生も、好きになった人でさえ。
雨衣と話せば、そっちの方がきっと楽しいし、盛り上がる。
それはきっと夏生だって同じはず。


「心配すんなよ、晴歌。俺は晴歌一筋だから」


そんなこと、言い切れるわけないじゃん。
ニヒヒ、と笑う夏生に、なんだか無性に腹が立った。


「......弾いてよ、ギター」


兄弟の話を振ったのは私のくせに、なんて自分勝手なのか。
でもこれ以上雨衣の話をしていると、見られたくないところまで見られてしまう気がして、それが少し怖かった。


「なんの曲?」

「いつもの……今日弾いてなかったから」

「あれ? そだっけ」


目ざといなー。あ、耳か。なんて笑いながら、夏生がギターを取り出した。


「では聞いてください。『タイトルはーまだありませーん』」

「……ふ、なにそれ――」