思ったことをすぐ口にして。明るくて、誰とでも分け隔てなく話せる。
この人は雨衣と同じ、周りから自然と愛される人だ。幸せな人、だ。
でもそれは、よく考えれば当たり前のことだった。
この人は幸せだから、満たされているから「雨音ラジオ」と称して「憂鬱な雨の日をイイモノに上書きしよう」……なんて、おせっかいなことができるんだ。
拒絶されたことがないから、思ったことを素直に口にできるんだ。
「晴歌! 外、雨上がってる!」
夏生が、土管の入口でくるりと振り返り、満面の笑顔を向けてきた。
その背後から、白く滲んだ光が差し込んでいる。
たしかに、さっきまでの雨の音はいつの間にか止んでいた。
しっとりと濡れた空気だけを残して、雨雲はどこかへ行ってしまったらしい。
「俺はそろそろ帰るけど、晴歌は――」
「か、帰るよ……っ」
さっきの「好き」は?
あれって、なんだったの?
こういうのって、返事がほしいとか言うもんじゃないの?
それともやっぱりてきとうなことを言っただけなんだろうか。
「さっきも言ったけど、俺、雨の日はだいたいこの時間ここでラジオ配信してるから」
夏生が、ふわりと笑いながらそう言う。
「だからさ、また来てよ。絶対」
眩しそうに目を細めて、まるで当然のように、当たり前みたいに。
そのまっすぐな視線が、少しだけまぶしかった。
「なんで」と問う私に、夏生は「だって『雨の中、寂れた土管の中で逢引する男女』ってエモいだろ」と笑う。
やっぱりこの人はわけがわからない。
からかってるのか、本気なのか。
どっちにしろ、全然読めない。
でも――
わけがわからないくせに、どうしてこんなにも心に残るんだろう。
答えを出すにはまだ早い。だからその気持ちは、名前のないまま心にしまっておくことにした。
この人は雨衣と同じ、周りから自然と愛される人だ。幸せな人、だ。
でもそれは、よく考えれば当たり前のことだった。
この人は幸せだから、満たされているから「雨音ラジオ」と称して「憂鬱な雨の日をイイモノに上書きしよう」……なんて、おせっかいなことができるんだ。
拒絶されたことがないから、思ったことを素直に口にできるんだ。
「晴歌! 外、雨上がってる!」
夏生が、土管の入口でくるりと振り返り、満面の笑顔を向けてきた。
その背後から、白く滲んだ光が差し込んでいる。
たしかに、さっきまでの雨の音はいつの間にか止んでいた。
しっとりと濡れた空気だけを残して、雨雲はどこかへ行ってしまったらしい。
「俺はそろそろ帰るけど、晴歌は――」
「か、帰るよ……っ」
さっきの「好き」は?
あれって、なんだったの?
こういうのって、返事がほしいとか言うもんじゃないの?
それともやっぱりてきとうなことを言っただけなんだろうか。
「さっきも言ったけど、俺、雨の日はだいたいこの時間ここでラジオ配信してるから」
夏生が、ふわりと笑いながらそう言う。
「だからさ、また来てよ。絶対」
眩しそうに目を細めて、まるで当然のように、当たり前みたいに。
そのまっすぐな視線が、少しだけまぶしかった。
「なんで」と問う私に、夏生は「だって『雨の中、寂れた土管の中で逢引する男女』ってエモいだろ」と笑う。
やっぱりこの人はわけがわからない。
からかってるのか、本気なのか。
どっちにしろ、全然読めない。
でも――
わけがわからないくせに、どうしてこんなにも心に残るんだろう。
答えを出すにはまだ早い。だからその気持ちは、名前のないまま心にしまっておくことにした。
