なんだろう、ちょっとした精神安定剤……みたいな。
ヤバいかな、私。知りもしない人の知りもしない音楽で、なんて。
だいぶキてるのかもしれない。でも、さっきよりずっと息がしやすい。
『――おー、最後まで聞いてくれてありがと。もしまた聞いてくれるって言うなら、よかったらコメントちょーだいよ。そしたら俺、ここで返事すっから』
コメント――?
足を止め、スマホの画面をまじまじと見つめる。
たしかに画面の下の方に手紙マークみたいなものがある。
ここから匿名でメッセージが送れる仕様らしい。
へぇ、こんなこともできるんだ。
まぁでも、コメントまではしないかな。
そう思いながら道路を横切ろうとした、その時。
「待ってよー!」
『……って、よ』
目の前を、傘をさした子供が走っていく。
それだけならなんの変哲もない光景だ。
だけどおかしい。その声が小さく耳元からもした気がするのだ。
違和感にふと足を止める。
『――コメントっつったら、昨日来てたのがあったな……えーと……アメノナカさん。いつもありがとー』
ラジオは変わらず進んでいる。私の気のせい?
ほんの小さな違和感は、拭い切れないままじわじわ広がっていく。
「――プッ!」
『――プッ』
歩道ギリギリで止まっていたので、前から来たトラックに軽くクラクションを鳴らされてしまった。
慌てて一歩下がり、運転席に向かって頭を下げる。
それでも耳に残っていたのは、たしかに――重なった、同じ音
気のせいなんかじゃない。微かだけど……やっぱり今、耳元からも同じ音が聞こえてきた。
――ドクン。
まさか。そんなことありえない。だけど……。
でも――もし、このラジオの雨音がただの効果音じゃなくて 本当に「この雨の音」だとしたら。
配信してる人はこのあたりにいるってことになる。
サッと視線を巡らせる。 音を拾える距離、声が届く範囲……。
どこか、外でも雨を避けられて、静かに話せる場所――。
「あ」
目に入ったのは、通りの向こうにある小さな公園。
誰もいない遊具。ぬれたベンチ。風に揺れるブランコの鎖。 その奥に――あった。
象の形をした滑り台。 体の真ん中に大きな土管がくり抜かれていて、中に入って遊べるようになっている。
昔、雨衣と一緒に入って、おしゃべりしたことがあった。
不思議な音の響き方に笑い合った、あの場所――。
そこなら、もしかして――。
ヤバいかな、私。知りもしない人の知りもしない音楽で、なんて。
だいぶキてるのかもしれない。でも、さっきよりずっと息がしやすい。
『――おー、最後まで聞いてくれてありがと。もしまた聞いてくれるって言うなら、よかったらコメントちょーだいよ。そしたら俺、ここで返事すっから』
コメント――?
足を止め、スマホの画面をまじまじと見つめる。
たしかに画面の下の方に手紙マークみたいなものがある。
ここから匿名でメッセージが送れる仕様らしい。
へぇ、こんなこともできるんだ。
まぁでも、コメントまではしないかな。
そう思いながら道路を横切ろうとした、その時。
「待ってよー!」
『……って、よ』
目の前を、傘をさした子供が走っていく。
それだけならなんの変哲もない光景だ。
だけどおかしい。その声が小さく耳元からもした気がするのだ。
違和感にふと足を止める。
『――コメントっつったら、昨日来てたのがあったな……えーと……アメノナカさん。いつもありがとー』
ラジオは変わらず進んでいる。私の気のせい?
ほんの小さな違和感は、拭い切れないままじわじわ広がっていく。
「――プッ!」
『――プッ』
歩道ギリギリで止まっていたので、前から来たトラックに軽くクラクションを鳴らされてしまった。
慌てて一歩下がり、運転席に向かって頭を下げる。
それでも耳に残っていたのは、たしかに――重なった、同じ音
気のせいなんかじゃない。微かだけど……やっぱり今、耳元からも同じ音が聞こえてきた。
――ドクン。
まさか。そんなことありえない。だけど……。
でも――もし、このラジオの雨音がただの効果音じゃなくて 本当に「この雨の音」だとしたら。
配信してる人はこのあたりにいるってことになる。
サッと視線を巡らせる。 音を拾える距離、声が届く範囲……。
どこか、外でも雨を避けられて、静かに話せる場所――。
「あ」
目に入ったのは、通りの向こうにある小さな公園。
誰もいない遊具。ぬれたベンチ。風に揺れるブランコの鎖。 その奥に――あった。
象の形をした滑り台。 体の真ん中に大きな土管がくり抜かれていて、中に入って遊べるようになっている。
昔、雨衣と一緒に入って、おしゃべりしたことがあった。
不思議な音の響き方に笑い合った、あの場所――。
そこなら、もしかして――。
