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「優奈、こっちに来て」
リビングで一緒にテレビを見ていると、海音に呼ばれた。小さな私を後ろから包み込む様に抱きしめながら、海音はテレビを見始めた。そんな私達を見て、海音のお母さんが溜め息を漏らす。
「あんた達、ホント仲良しね。こっちが照れちゃうわよ」
そう言われ、自分の状況を見た。昔からこんな感じだったから、海音のお母さんの言葉にキョトンとしてしまう。さすがに高校生ともなるとまずいのかもしれない。私が海音から離れようとすると、海音がそれを拒んだ。
「離れるな」
少し低めの声音……。
「山音……」
私は思わず山音の名を呼んだ。それは無意識だった。しかし海音の体が一瞬、ビクッと震えた。そっと海音の顔を覗き込むと、目を見開いたままこちらを見ていた。
違和感の正体……まさか……。
まさか……ね。
少しずつ……少しずつ言い様の無い不安が襲いかかる。
そんな事があるわけがない。
あるわけがない。


